「高卒でいっかあ」冷めた気持ちで行った面接が転機に
高校2年生のある日、野球を頑張っていた弟が高校に入ってグレ始め、ヤンキー集団に加入しました。そんな彼のために母が探してきた、地元にある小さな個人塾。「塾なんか死んでもいかねえ!」という弟の代わりに、なぜか私が面談だけ行くことになりました。
エスカレーター式で上がれるはずの大学の推薦も、素行不良と学業成績不振で取り消され、「もう高卒でいっかあ」と生きていた私にとって、「塾」という存在はたぶん当時もっとも遠いところにあるものでした。誰が好きこのんで大学に行くんだよ、どう間違ったら勉強なんか頑張る人生になるんだよ! と冷めた気持ちで、面談室のイスに座りました。
そこからなにが起こったかは、ぜひ映画『ビリギャル』を御覧ください(意外といい映画なのでぜひハンカチをお供に)。端折るけど、なんだかその日に「私はけいおうに行くぞ!」と燃え始め、その塾の先生と二人三脚で勉強して、1年半後に本当に合格しました。高卒から一転、東京で世界が広がりました。
あれから20年がたち、私は昨年2024年にアメリカのコロンビア教育大学院を卒業しました。英語は留学を志すまではまったくできませんでした。パンデミックになる直前に「今からでも留学に行きたい!」と思い立ち、コロナ禍の間1年半、家にこもって英語を泣きながら勉強しました。
留学に必要なTOEFLという英語のテストで最低必須の100点を突破し、志望動機のエッセイを何度も書き直して、やっとの思いでつかんだ留学にいくという夢。
2022年9月頭、大学院のプログラムがはじまる前のオリエンテーションで泣けてきたのを覚えています。
オリエンテーションとは、学校の仕組みやルール、学習の進め方などを説明する機会のはずです。でも、私は、このオリエンテーションで一体なにを説明されているのか、ほとんど理解できなかったんです。
もちろん、そんなやつは2000人の新入生の中でわたしひとり。私はがく然としました。こんなにも、本場の英語が聞き取れないとは……。