「もう見つからないかもしれないな」と思いながら、その日は1日中、落ち着かない気持ちで過ごしました。ところが翌27日、なんと「該当するバッグが見つかって、東京駅で保管している」と連絡があったのです。
すぐに京都駅から東京駅に向かい、バックを受け取ることができました。中身は全て無事でした。
電車に置き忘れたバッグが1日で見つかって、そのまま戻ってくるなんて、私にとっては信じられない出来事でした。
これだけ多くの新幹線が運行している中で、全車両の忘れ物をチェックして、保管して、忘れた人に連絡するシステムが確立されていることに驚きを隠せませんでした。
「ジャパン・トレック」がハーバードビジネススクールの学生の間でこれほど高い評判を集めているのは、このように授業で学んだことを実地で体験する機会を与えてくれるからでしょう。日本の優れた鉄道システムやオペレーションシステムの価値は、日本に来てはじめて実感できるものです。
私のバッグを見つけてくれた人、保管してくれた人、それから、京都駅で東京行きの切符を買うのを手伝ってくれた人、全ての日本の方々にこの場を借りて、感謝したいです。

トヨタの事例がハーバードの学生を
惹きつける2つの理由とは?
テッセイに加えて、とても印象に残っているのがトヨタ自動車の事例です。その理由は主に2つあります。
1つは、通常の授業に加えて、まる1日かけて電子回路基板を組み立てるオペレーション実習があったこと。「カイゼン」や「5つのWHY」(なぜを5回問うことによって真因を突き止めること)のコンセプトを実際に取り入れながら、オペレーションを最適化していく体験をしたので特に強く記憶に残っています。
もう1つはトヨタ生産方式の基本的な思想(「自働化」「ジャスト・イン・タイム」)は、製造業だけではなく、ヘルスケア業界、飲食業界、IT業界など、どの業界にも応用できること。
私たちビジネススクールの学生にとっては「入学前に働いていた職場ではこんなふうに導入できるな」「卒業後、就職したいと思っている業界では、このように取り入れてみよう」といった感じで、その活用法のアイデアが次々と浮かんでくるコンセプトなのです。