これで自信を深めたトランプは、米国内では“独裁体制”に近い力を手に入れ、外交的には“Make America Great Again”を実現するためのディールを仕掛けることがやりやすくなるだろう。
逆に、ウクライナ戦争和平調停完遂時期がS3(トランプの任期後半の2027年後半から2028年の間)のように遅れる場合やS4(トランプの任期内に和平協定が締結されない場合)には、トランプの実力が問われ、トランプの政権運営にブレーキがかかる事態も想定される。
戦争の長期化を願い
“漁夫の利”を狙う中国
トランプが世界的課題であるウクライナ戦争の和平調停を実施している限りは、彼はインフルエンサーとして世界に君臨することができ、国内外問題でディールする際に、主導権を握り続けることができるだろう。したがって、トランプはウクライナ戦争和平調停役に執着し続けるはずだ。懸念されるのは、プーチンがトランプのこのような野望を見抜き、それを逆手にとって、ロシアに有利な条件を飲むように迫る可能性があることだ。
筆者は、トランプがウクライナ戦争の和平調停を実施している間は、習近平による台湾侵攻――和平調停に水を差すような挙――を実施することはないとみている。
プーチンはトランプの野心――功を急いで自己の政策遂行の追い風に利用しようとしていることなど――を見抜き、それを逆手にとって和平調停の内容を自己に有利にしようとする策を追求するだろう。
一方、習近平はウクライナ戦争の和平調停が順調に達成されれば、中ロ関係が分断される恐れがあるため、台湾への軍事的な圧力を強化するなどの策により、トランプの和平調停を妨害する可能性があろう。
ゼレンスキーは、2025年4月17日の記者会見で、中国がロシアに「大砲」を供与している可能性があると述べた。また、4月9日にウクライナ当局が戦線で中国人兵士の存在を確認したと発表した。ウクライナ当局は、ロシア軍側で戦闘に参加していた中国人兵士ふたりを拘束し、記者会見を開いた。これらの兵士はロシア軍に雇われた傭兵(ようへい)であり、中国国内のSNSで見つけた勧誘動画を通じて参加したと証言している。