歩み寄った両国の間には
解決不能に見える問題が横たわる

 まだ緒にも就いていない和平交渉であるが、ロシアとウクライナの和平交渉に向けては、以下のようないくつかの重要な課題がある。

(1)停戦の維持:これまで、ロシアとウクライナは短期間の停戦を試みたが、双方が違反を非難し合う状況が続いている。これを克服しなければ交渉のテーブルに着くのは困難だろう。

(2)領土問題:ロシアが占領しているクリミア半島と東南部4州の帰属問題。

(3)制裁の緩和:アメリカは和平合意の条件(=“アメ”)として、ロシアへの制裁緩和を提案し、ロシアもそれを求めているが、ヨーロッパ諸国は慎重な姿勢を取っている。

(4)ウクライナの安全保障:ウクライナの安全を確保するために、国際的な軍事協力が議論されている。とくに英仏を中心とするヨーロッパ諸国は、ウクライナの防衛を強化するための部隊派遣を検討している。マクロン仏大統領は、ウクライナの安全保障を確保するためにヨーロッパ主導の「平和維持部隊」の派遣を提案しており、英仏両国はほかのヨーロッパ諸国への説得を続けている。

 しかし、ヨーロッパ諸国は、部隊派遣に慎重な姿勢を示し、とくにアメリカの関与が不透明なことが議論の障害となっている。

 また、ウクライナ政府は、確実な安全保障のためには15万~20万人の部隊派遣が必要だと主張しているが、各国が自国の防衛を維持しながら兵力を提供できるかどうかは不明である。

(5)アメリカの関与:トランプは和平交渉を進める意向を示しているが、今回のウクライナ和平協議に進展がなければ、仲介を見送る可能性を示唆している。この事実から推測すると、今後、トランプの意向に沿うような進展が見られない場合は、仲介から手を引く可能性も排除できない。

 ウクライナの和平調停が達成されるためには、このような大きな課題が複数あり、ウクライナ・ロシア双方の合意と妥協を見出すのは簡単ではなかろう。