私たち人間が読者として文章を読む場合、何が書いてあるかだけでなく、誰が書いたかが重要になります。自分がファンの、いわゆる「推し」の書いた言葉は、匿名の筆者が書いた言葉よりも何倍も心に響くものです。
テキスト生成AIの書いた文章はどことなく個性に乏しい印象を与えます。生身の人間が書く場合、文章に身体的・心理的な特徴が表れますし、日常生活やエピソードがにじみでるものです。
その意味で、人間の書く文章は各人の性格や経験に基づく偏りがあるものですが、テキスト生成AIの書く文章は総じて偏りが感じられない平均的な文章になりがちです。それが、読者の心に響きにくい理由にもなっています。
短所の4つ目は、噓をつくということです。
専門語でハルシネーション(幻覚・幻影)と呼ばれる現象です。テキスト生成AIに噓をつこうという意識があるわけではありませんが、ユーザーの指示にできるだけ沿うように無理に答えようとすると、回答が噓になることがあります。
先行する文脈から次に来る言葉を確率的に計算するテキスト生成AIの宿命であり、RAGと呼ばれる外部情報を検索・参照する技術の発達により改善は進んでいますが、テキスト生成AIに文章を書かせる側としては、ハルシネーションが起きていないかをつねに確認する必要があります。
生成AIに頼り過ぎると
「考える」力が失われる
このような4つの弱点を持つテキスト生成AIですが、こうした弱点を補って余りある長所を備えているのも事実です。
とくに、Web上の膨大なテキストデータから帰納された自然な文章表現は、テキスト生成AIの特長と言ってもよいでしょう。テキスト生成AIの現状を私なりに分析すると、次のとおりです。
・内容面――テキスト生成AIが生成する文章の内容は、陳腐であったり噓が混じったりするので、そのまま使うのはリスクがあるが、書くときの参考にはなる。
・表現面――テキスト生成AIが生成する文章の表現は、膨大なデータベースから導きだされたもので、誤りが少ないという点で十分実用に耐えうる。