
少年法の改正で、重罪を犯した18歳・19歳は「特定少年」として厳罰化されることになったが、少年法の対象であることには変わりはない。彼らを裁くのは、裁判員。選ばれるのは「衆議院議員の選挙権を持っている人」であり、公職選挙法の改正により、選挙権は18歳からとなった。18歳が殺人少年を裁くということが起こりうる。18歳は、大人なのか、子どもなのか?※本稿は、川名壮志『酒鬼薔薇聖斗は更生したのか:不確かな境界』(新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。
少年法を戦前に戻したい
法務省の「青少年法構想」
平成末期から令和にかけて、本格化した感のある少年法をめぐる“大人・少年論争”。
だが、そもそも戦前の日本では、少年法の適用年齢が18歳未満までだった。
そして、そのシステムも今とは少し異なった。少年審判所(今でいうところの家庭裁判所)よりも先に、検察官が少年を調べ、死刑の適用年齢も原則16歳からだった。
それが終戦直後に新しくできた少年法によって、適用年齢は2歳引き上げられて、20歳未満となり、検察よりも先に家庭裁判所が少年を調べ、死刑の適用年齢も18歳以上……というように変わった。
その今の少年法に異論を唱えたのは、意外なことに官僚たちだった。
1960年代に少年事件が増えた時期に合わせるように、法務省が突如、「青少年法構想」などと呼ばれる、少年法改正の構想をぶちあげたのだ。
法務省が1966年に発表したこの構想は、現行の少年法が適用される年齢を、18歳未満に戻すことが柱だった。それも18歳以上~22歳を、新たに「青年」と規定。原則として刑事裁判の対象にする、などとしたものだった。