(3)学びの量が桁違いに増える
3つ目のメリットは、学習量が桁違いに増えることです。
誰かを助けるということは、その誰かが解決すべきだった問題を、自分が解決することを意味します。その人が経験して学ぶはずの事柄を、自分が代わりに学べてしまうということです。
自分の仕事だけをやっている人に比べて、経験量が2倍にも3倍にもなります。「経験は人を作る」という意味でも、当事者意識を持って行動する人は、どんどんスキルアップしていくのです。
そうなると仕事の視野が広がり、状況の先読みができるようになります。トラブル発生に対する感度が高まり、予防線を張れるようになるので、ミスもどんどん少なくなっていきます。これは、非常に実用的なメリットと言えるでしょう。
多様な経験を積むことで、問題解決能力や対人関係スキルも向上します。これらのスキルは、どの職場でも、どの職種でも重宝される汎用性の高いものです。
このように、当事者意識を持った結果、学んだことは、単なる知識の蓄積以上の価値があります。実践的な経験を通じて身につけたスキルは、その人の長期的なキャリア形成において、大きなアドバンテージとなるのです。
3つのメリットを総合すると、当事者意識を持つことは、非常に優れた自己投資であることがわかります。短期的には「損」をしているように見えても、長期的には確実に「得」をする戦略なのです。
一見すると「タイパ」「コスパ」が悪そうだが
実際はキャリアを拓く近道になる
ここまでお読みいただいて、「結局、当事者意識を持つって、計算高い行動なのか」と驚かれた方もいるかもしれません。その通りです。そして、それで構わないのです。「なんで私が他の人の尻拭いをしなければならないの」という問いの答えは本当に「それはあなたのためになるから」なのです。
職場で「いい人」と思われている人は単なるお人好しではなく、自分のキャリアにとって得だと判断して、戦略的に、他人のミスをカバーしたり、イベントの幹事を引き受けたりしているのです。
「あの人はなぜ成功しているのだろう」と思う人の行動を探ってみると、結局、組織市民行動を取っている、つまり当事者意識を持って行動していることが多いのです。よくできた人だから出世していくというのは、半分はこの理由によるものです。
もちろん、誰かのケアばかりやっていて自分が疲弊するのは本末転倒ですが、自分の責任範疇の外にある仕事を頼まれたとき、それを自分のキャリア戦略として合理的な行動だと考えれば、見方が変わるのではないでしょうか。
多くの人は、近視眼的思考に陥りがちで、短期的な自己利益ばかりを重視して、長期的な利益を犠牲にしてしまいます。しかし、一見「タイパ」「コスパ」が悪そうな当事者意識による行動が、実は、なによりもタイパ、コスパよく経験を積むことにつながっているのです。あなたも今日から早速、当事者意識を持って行動してみて下さい。少しずつキャリアが拓けていくはずです。
