一生懸命に考えたのに、思ったように伝わらない」「焦りと不安から自分でも何を話しているかわからなくなってしまう」…。言っていることは同じなのに、伝え方ひとつで「なんでこんなに差がつくんだろうと自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
コンサルタントとして活躍し、ベストセラー著者でもある田中耕比古氏の著書『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』から、優秀なコンサルが実践する「誰にでもできるコミュニケーション術」を本記事で紹介します。

「何も考えず話す」のは三流。「その場で考えて話す」のは二流。一流は「あえて」どう話す?Photo: Adobe Stock

「型」を使って話す

型とは、つまり、話の構造であり、情報を伝える順番です。

そして、コンサルタント、あるいは、優秀なビジネスパーソンは、こういう「型」をたくさん持っていて、それを使い分けることで「話がうまい」「説明がうまい」といった印象を周囲に与えています。

私は、こうした数多くある「型」の中で、幅広く利用できる代表的なものをピックアップして「テンプレ」としてまとめました。

「テンプレ」にすることで、より多くの人が「型」を構造的に理解し、日々の仕事の中で実践することができると考えたからです。

「テンプレ」というと、何だか面白みのない、自由を奪うものだと感じる人もいるかもしれません。

「テンプレ通り」という言葉からは、お仕着せでつまらない印象を受ける人も多いでしょう。

そもそも「テンプレート」とは、何かを効率よく進めるための“ひな形”や“下敷き”のことです。

ビジネスの現場では、議事録のフォーマット、報告書の構成、会議の進行順など、さまざまな場面で「テンプレート化された進め方」が使われています。

型通りというと、何だか堅苦しく感じるかもしれません。

しかし、テンプレがあれば、「どこから話し始めるか」「何を軸に据えるか」「何をあえて省略するか」という判断に迷うことが減ります。

迷わないから、もう一歩踏み込んで「工夫する余地」ができます。

テンプレを軸に思考し、表現する

例えば、私が後輩や部下に仕事の進め方・考え方を教える際には、「時系列で考えると、漏れない」ということをまず教えます。

「朝起きてから、家を出るまでにやることを思い出してください」、と言われたとき、あなたはどのように思い出しますか?

バラバラと頭に浮かんだ順に「歯磨き、着替え、コーヒーを飲む、天気予報をチェックする……」と挙げていってしまうと、すべてを思い出すことは難しくなります。

それを「目覚める→ベッドから出る→洗面台に行く→顔を洗う→歯磨きをする→トイレに行く→コーヒーメーカーのスイッチを入れる→寝室に戻る→着替える……」というふうに、目が覚めてからの自分の行動を振り返って、時間通りに順序だてて整理すると、「漏れなく」洗い出すことができるのです。

この考え方は仕事の現場にも応用できます。例えば「業務に関するヒアリング」の際には、「時間軸に沿って質問する」というアプローチが考えられます。

これは、「ヒアリング」する際に有効なテンプレだと言えるでしょう。

当然ながら、ヒアリングをしている中で、相手が想定とは違う話をしてくるケースは多くあります。

そんなときにも「時系列に戻る」というふうに決めていれば、「先ほどの続きに戻りますが」といって、元の場所に戻りやすくなるはずです。

あるいは、同じ考え方を適用してヒアリング内容の整理をすることもできます。

先ほどは、質問の仕方で時系列の考え方を使いましたが、こんどは「相手が話していることを、時系列に整理する」という目的で使うのです。

「これは、受注したときの話だな」

「これは、発送するときの話だから、受注より後だな」

「お、入金確認の話か。今回の場合だと請求書払いだから、発送よりも後の話だな」

「見積もりか……。ってことは、受注よりも前だな」

というふうに、バラバラな順番で出てくる先方の話を聞きながら、時系列に整理していくわけです。

こうすることで「すみません。請求書の発行処理についてお聞きしても良いでしょうか?」などのように、抜け漏れがある部分をピンポイントで見極めて質問することができます。

「時系列で考える」と決めれば、それを応用した仕事の進め方を「テンプレ」として自分の中にストックすることができるのです。

こうした「テンプレ」を持つことで、コミュニケーションの軸足が定まり、会話中に「どうやって話そうか」と迷わなくなります。

そして、伝え方がうまくなると共に会話の内容に集中できるようになるのです。

テンプレは、伝え方の完成形、理想形ではありません。

自分の考えを伝えるための思考の支柱、表現の起点だととらえていただければと思います。

(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の一部を抜粋・編集したものです)