国民にとってどんな医療が必要かよりも、とにかく医療費を削減するために、診療報酬の改定を機に新たな施設体系を作ったりするものだから、一般の人には分かりにくいし、そのために病院が潰れれば近くて気軽に入院できる病院が減っていく。

 例えば、2006年に、急性期病院の入院基本料が最高額になる7対1入院基本料が創設されると、かなり多くの病院がこれに飛びついた。

 急性期病院(編集部注/救急患者を対象に、24時間体制で高度な医療を提供する病院)の入院費は、患者に対する看護師の人数で診療報酬点数が決められている。7対1入院基本料の報酬が得られるのは、患者7人に対して看護師1人を配置した病棟だ。

 7対1入院基本料の導入は、心筋梗塞(こうそく)や脳血管疾患の発症直後や、がんの手術の直後など、一部の超急性期医療の看護配置を手厚くする狙いがあったようだ。確かに、ほんの一部の高度急性期病院では看護師の配置を手厚くして、手術の後の合併症が減るなどしたため、看護師を増やす効果は高いかもしれない。

 だが、そこまで看護師の配置を手厚くする必要のない病院でも、高い診療報酬を得たいと考えるのは、経営者としては当然と言えば当然だ。医師である理事長・院長たちは診療報酬点数の高い方へ群がった。

 7対1看護の病床の数は飛躍的に伸び、2014年3月時点では約38万床に達した。当時の一般病院の総病床数は約90万床だから、手厚い看護が必要ない患者を対象にした病棟を含めてその4割以上が7対1入院基本料を請求する病床となったわけだ。

 厚生労働省は、誘導したい方向へ診療報酬点数という餌をぶら下げて誘導する。そして、診療報酬が高額なところへ参入する病院が多過ぎると、厚生労働省が、その報酬を得るための要件を厳しくしたり値段を下げたりして、そこに群がる病院を減らす。

 突然、診療報酬の項目をなくして、病院経営者から見たら「はしごを外された」と感じられるような診療報酬改定も平気で行われている。

医療費削減を狙う財務省が
診療報酬の改定を主導している?

 7対1入院基本料も例外ではなく、2年に一度の診療報酬の改定の度に、最初の段階では設定されていなかった、「患者の重症度や医療・看護必要度」という評価項目を設けたり患者の平均在院日数の縛りをかけたりして、算定要件を厳しくして病床数を減らそうとしている。