昨年話題になったダンプ松本の時代を描いた『極悪女王』や大相撲を舞台にした『サンクチュアリ-聖域-』はどちらもネットフリックスオリジナルのスポーツドラマですが、俳優の体づくりに1年の時間をかけて撮影に臨んでいます。これは地上波の低予算の制約ではおなじことを行うことは不可能です。

『サンクチュアリ -聖域-』に主演して一躍世界的に有名になった俳優の一ノ瀬ワタルさん『サンクチュアリ -聖域-』に主演して一躍世界的に有名になった俳優の一ノ瀬ワタルさん Photo:JIJI

 なぜそれができるのかというとふたつの理由があります。ひとつは尖った話題作そのものがWBC同様に、新規会員を獲得する重要な入り口になります。ですからネットフリックスはドラマの制作予算に会員獲得の広告宣伝予算を上積みできるのです。

 もうひとつの理由はドラマの配信先が日本市場だけではなく、グローバル市場全体をターゲットにできることです。少なく見積もって日本のテレビ局の3倍の市場から製作コストを回収できるのであれば、製作予算を3倍に積み増すのはたやすい話です。

 ネットフリックスのオリジナルドラマには人気漫画『ONE PIECE』の実写版があります。

 ゾロ役の新田真剣佑以外は日本人ではないグローバルな俳優陣が主役を張り、ハリウッド映画クラスの予算をかけた特殊効果で能力者たちが戦うONE PIECEの世界観を見事に実写化しています。これを実行するのは日本の地上波では不可能です。

 こうしてコンテンツレベルでは世界級の日本発ドラマやオリジナル映画のラインナップが充実しているのを、それまでネットフリックスを知らなかった視聴者層がWBCをきっかけに気づくことになります。

「それで890円なら便利じゃないか」と契約を続ける人が150万人ぐらい出てくるのはありえる話です。