これは地上波テレビ局では回収不可能です。一方で有料動画配信のネットフリックスの場合は現実味のある数字と言えます。

地上波テレビが絶対に追いつけない
ネットフリックスの「制作能力」

 ネットフリックスの最安プランは広告付き月額890円です。WBCをきっかけに新規の顧客が獲得できたとして、仮に平均で1年間程度、ひとり年額1万円を新規会員からのサブスク料金収入が得られるとします。すると150万人の会員獲得で150億円の投資を回収できることになります。

 日本におけるネットフリックス会員数は直近の数が公表されていないのですが、2024年上期に1000万人を突破したと報告されています。この状態からWBCを使って一気に150万人の新規顧客を獲得するというのは、可能性としては狙える範囲の数字です。

 ネットフリックスの会員構成はその8割がネットに親和性が高い40代以下の世代だとされます。一方で野球ファンは50代よりも上の層に多いのです。ですから、WBCというコンテンツはネットフリックスなどの動画配信を使ったことがない高年齢者という巨大市場にネットフリックスが入り込むためには、ある意味最適なコンテンツでもあります。

 おそらく来年の春には500万人から1000万人の50代から80代のファンが、子や孫、友人・知人の助けを借りて、テレビやパソコン、スマホなどでネットフリックスを視聴するようになるでしょう。その大半はWBCが終われば動画配信など使わないかもしれません。

 しかしその一部は、ネットフリックスを使うと『新幹線大爆破』や『地面師たち』を見られることに気づくでしょう。来年春ということですから『国宝』や『鬼滅の刃』も見ることができるかもしれません。地上波だけが楽しみではないことに気づく50代から70代がたくさん出現します。

 実はWBCだけでなく、ネットフリックスが制作するオリジナルドラマも番組制作費は地上波の常識と比べればケタ外れの高額予算となっています。