高校に通わずに、独学で東京大学文科一類に“ほぼトップ合格”を果たした人がいる。国語特化のオンライン個別指導「ヨミサマ。」を経営する神田直樹氏だ。そんな神田氏は受験の際、「暗記科目を覚えるために一番役に立ったのは読むことだった」と語る。さらに、それは「音読」ではなく「黙読」であることが大事だという。なぜ、黙読がそれほどまでに有効なのだろうか。本記事では、神田氏の著書『成績アップは「国語」で決まる! 偏差値45からの東大合格「完全独学★勉強法」』の内容をもとに、東大受験を突破した神田氏が黙読をすすめる理由について解説する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

高校進学せずに東大に合格。その秘訣は国語力
神田氏が「東大に進学する」と決めたのは中学校3年生の時だ。そして、その際に高校に進学しないことも決めたのだという。
神田氏は、「高校に通うと非効率な時間を費やすことになり、東大合格の回り道になるとさえ思った」と語る。
15歳の時に受けた模試では偏差値45だったという神田氏が、そこから独学で東大合格に至るまでの間、一番役立ったのは「国語力」だったそうだ。
神田氏が考える「頭がいい人」の3つのポイントは次の通りだ。
相手の伝えたいことを適切に理解できる
②熟考する力
理解したことを深く考え抜ける
③伝達する力
考えたことを構造的にわかりやすく伝えられる(P.11)
そして、この3つの要素は「国語で問われている力である」と指摘する。
一方で、あらゆる学びの場で大事になるのは「記憶」であるとも語る。
そして、「記憶力を高めるのに、最も有効なのは『読む』ことであり、国語力は記憶を大いに助けてくれるのです」と主張する。
暗記に効果的なのは、音読か黙読か
ではなぜ、読むのがいいのか。神田氏は次のような理由を挙げる。
①「読む」は「書く」より速く、「書く」の19倍の速さで「読む」ことができる。
② ①により、1回「書く」間に、19回「読む」ができる。
③ 反復学習によって記憶の定着率が上がるが、「書く」よりも「読む」ほうが労力がかからないので、反復練習のハードルが下がる
このような理由から、「書く」より「読む」ほうが記憶が定着しやすいと語る神田氏だが、同じ「読む」であっても、さらに「音読」より「黙読」のほうが効果的だと語る。
その理由は、神田氏の子どもの頃の体験に基づいている。
神田氏は15~16歳の頃にドイツで暮らしていた。そして、ドイツ語習得のために通っていた現地の語学学校が、音読を推奨している学校だったのだそうだ。そこで、神田氏はドイツ語のテキストを音読した後、「この文章を読んでどう思った?」と質問されたが、まったく答えられなかったのだという。
英語の文章を読むにしても、音読よりも黙読のほうが、より内容を理解できることを実感すると思います。(P.39)
確かに、読み上げつつ理解するという2つのことを同時に行うのは、なかなか難しいに違いない。
神田氏が「音読」よりも「黙読」をすすめるには、他にも理由がある。
それは、「黙読は音読のおよそ2.7倍のスピードで読めるからだ」という。
「読む」に「声を出す」という作業を加えてしまうと、情報を素早くインプットできるという「黙読」のメリットが削がれるので、僕は音読より黙読をオススメするのです。(P.39)
黙読でしがちなNG習慣とは?
記憶の定着には「読む」が、特に黙読が効果的であると提唱する神田氏だが、その際にしてはいけないことがあるという。
それは、気になるところにラインマーカーを引いたり、付箋をつけたりといった作業だ。その理由を神田氏は次のように語る。
そして、「反復して『読む』ことにより、ラインマーカーや付箋に頼らなくても、メリハリづけた黙読ができるようにもなる」と言うのだ。
神田氏は、効果的な記憶の定着法を、「ペンキ塗り」にたとえて次のように解説する。
正しく効果的なペンキの塗り方というのは、薄く何回も塗り続けることで、「ムラ」を可能な限り少なくすることです。(P.42)
ペンキ塗り同様、「読む」際にも、一度で理解しようとすると「ムラ」が生じる。何度も重ねていくことで、隙のない効果的な記憶の定着につながるのだ。
確かに映画やドラマを見ていても、一度目はストーリーを追うのに一生懸命だが、2度目になると1度目には気づかなかった俳優の表情や、セリフの言い回しの妙などに気づくことがある。
何度も繰り返すことでより詳細に覚えられるというのは、きっとそういったことと同じことに違いない。
書かずに覚える。今日からできる黙読術
学校での勉強法といえば、書いたり音読したりが多いため、黙読の効果をあまり感じたことがない人も少なくないだろう。
しかし、神田氏の言う通り、スピーディに簡単にできて、かつ反復しやすい黙読は、暗記ものの勉強にぴったりだと感じられる。
何より、高校に進学せずに東大合格を果たした神田氏の経験によるものなので試してみる価値はあると言える。
受験生や資格試験の勉強をしている人などはぜひ試してみてほしい。