子どもを褒める際には、「頭が良いね」ではなく、「1時間も勉強したんだね」「最後までがんばったね」など、努力や行動の過程を褒めることが大切です。これが子どものさらなるやる気につながります。
また、子どもは、直接自分に向けられた評判だけでなく、他の子どもへの評価を耳にすることでも、道徳的な行動に影響を受けることがあります。5歳児は「〇ちゃん(その場にいないクラスメイト)はいい子だね」という大人同士の会話を聞くと、分配課題でより寛大な行動をとることが示されました(注7)。5歳ともなると、他の子どもへの評価を聞いた場合でも、自分の道徳的な行動の指針にしていることがわかります。

これらの研究から、子どもは褒め言葉に敏感で、その反応が行動にも表れることがわかっています。また、子どもは自分に向けられた言葉だけでなく、大人同士の会話の中で耳にした他者への評価からも影響を受け、自らの行動を調整します。このことから、周りの大人の言葉やふるまいが、子どもの道徳的な成長に深く関わっていることがわかります。
これまでの研究を踏まえると、人間は生まれながらにして、利他的な心を備えていると考えられます。その後、周囲の大人との関わりによって、道徳的な行動が育まれていくのか、自己中心的なふるまいが強まるのかが左右されるのです。
赤ちゃん研究がさらに進んで、人間が本来、利他的で道徳的な存在であることが明らかになっていけば、私たちの社会は今よりも確実に、よくなるように思います。
(注7)Qin, W., Zhao, L., Compton, B. J., Zheng, Y., Mao, H., Zheng, J., & Heyman, G. D. (2021) Overheard conversation can influence children’s generosity. Developmental Science, 24, e13068.