「他の人はうまくやっているのに自分だけダメだ」
――と自己批判に陥り、自信を失いがちなチームメンバーに、リーダーはどう声をかけるべきだろうか? 頭を抱えるリーダーの姿。最新の心理学研究では、こうした自己肯定感の低いメンバーに対し、「セルフ・コンパッション(自分に思いやりをもって接する方法)」が、不安を軽減し、自己肯定感と仕事のパフォーマンスを向上させる有効な手段であるという。
そこで参考にしたいのが、世界中で行われた経営学、心理学、経済学等の研究成果をもとに、グロービス経営大学院の教授陣が協力して書いたチーム・ウェルビーイングの教科書。「チームリーダーにできるちょっとしたのコツ」をまとめた一冊『職場を上手にモチベートする科学的方法――無理なくやる気を引き出せる26のスキル』
今回は、同書から特別に抜粋・再編集し、この心のレンズを調整する「逆発想の処方薬」を活用し、個人そしてチーム全体のウェルビーイングを高める具体的な方法を科学的知見と共に紹介。

自己批判しがちPhoto: Adobe Stock

自己批判が多く、自己肯定感が低いメンバーを変えたい

 あるメーカーのマーケティング部のリーダーを務める佐藤さんは、メンバーのひとりである安田さんのことが気になっています。安田さんはいつも自分を責めるように話すのです。安田さんと面談すると、次のような言葉が口ぐせのように出てきます。

「ほかの人はうまくやっているのに、自分だけダメです」
「この程度ではダメだと思います」
「完璧にやれなくて、自分には価値がないと思います」
「どうして自分はもっとがんばれなかったのか」
「自分はまだまだ不十分」

 安田さんはちょっとした失敗でも自分を責めてしまい、いつも自信がないように見えます。

 安田さんに限らず、多くのビジネスパーソンが自分を批判しがちです。ところが、こうした自己批判も行き過ぎてしまうと、不安が高まり、自己肯定感が失われてしまうことになります。

 自己肯定感がなくなるとワーク・エンゲージメントも下がってしまい、結果的に仕事のパフォーマンスも落ちてしまいます[1]。場合によっては、体調を崩し、仕事を休みがちになることもあります。

 このようなメンバーにはどんな働きかけを行えば効果的でしょうか。