株主優待が使えるECサイト「ちいきの逸品」で人気のハム・ソーセージ。株主優待が使えるECサイト「ちいきの逸品」で人気のハム・ソーセージ。

最近、株主優待を拡充する企業が増えているが、その中でも圧倒的な優待利回りを誇る企業がある。それが、千葉県を地盤にフリーペーパー『ちいき新聞』を発行する地域新聞社だ。2025年に入って大幅な優待拡充を発表し、株価上昇を経た現在も50%超の驚異的な優待利回りを誇る。なぜここまで「太っ腹」な株主優待を始めたのか? また、もう1つ気になるのは「上場維持基準」をクリアできるかどうかだ。その「勝算」について、地域新聞社・細谷佳津年社長にインタビューした。まずは【前編】をお届けする。(市川森彦、ダイヤモンド・ザイ編集部)

通販と店舗の割引券がもらえて
50%超の驚異的な優待利回り

――地域新聞社は、2025年に入って株主優待を大幅拡充し、個人投資家の間でも話題になりました。優待の内容からご説明お願いします。

 2024年までは、自社通販サイト「ちいきの逸品」の20%割引という優待でしたが、2025年2月末分から大幅拡充し、8月末分でもさらに拡充しました。

 現在(2025年8月末時点)の優待内容は、「ちいきの逸品」で使える割引券と、千葉県内の店舗で利用できる割引券(食事券など)です。100株保有の場合、「ちいきの逸品」の割引が合計9000円分、店舗の割引券が合計1万円分です※。これを年2回贈呈します。

※「ちいきの逸品」割引券は1万円以上の購入で利用可。各店舗の割引券は店舗ごとに使用条件あり。

――優待利回りは約50%ですから驚異的です。しかも、優待の大幅拡充を発表した2025年1月時点の株価では、優待利回りが100%超でした。なぜこんなにも「太っ腹」な株主優待を始めたのでしょうか? 

 大きな動機は、時価総額の向上です。当社は千葉県内でフリーペーパー『ちいき新聞』を発行しており、2007年10月に当時の大証ヘラクレスに上場、2013年に東証グロース市場に上場しました。

『ちいき新聞』は千葉県を中心に毎週174万部配布されている。『ちいき新聞』は千葉県を中心に毎週174万部配布されている。
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 しかし、東証グロース市場の上場維持のためには、2026年8月までに時価総額40億円を達成しなければなりません。一方、2024年末の時点での時価総額はたった10億円あまりという危機的状況でした。

 株価を改善し、時価総額を上昇させることは喫緊の課題です。しかし、現在の財務諸表の状況では、配当や自社株買いといった株主還元はできません。そうした中で、何らかの形で株主に報いたいと考えた時に、「株主優待」がもっとも有効だと判断しました。