しかし、全てがそう理論通りにいくのでしょうか? 先ほどの【有給休暇クエスチョン】を振り返ります。
(1)武田さんはすでに有休申請している(今月期限の年間5日取得が全くできていない)
(2)山本さんは終日社外研修がある
(3)田中さんは地方出張に行く
(4)川合さんは実父の通院の付き添いで午後に介護休暇を申請している
この状況では、佐藤さんまでこの日に休むと業務が回らなくなることは明らかです。このように業務に支障が出る場合は、会社は時季を変更する権利があります。
ただし、有給休暇をいつ取得するかは労働者の意思が優先されるので、強制力はありません。変更する際にはその理由を本人に伝え、納得してもらう必要があります。まずは業務を調整した上で、どうしても難しい場合に出す「交渉のカード」程度に考えてください。多忙だからとか、とりあえずの人員確保といったことは理由になりません。
会社側の本音として「たくさん有休を取られると正直困る……」「一度に長期取得されると業務が回らない……」といった声はよく挙がります。これらは、業務の属人化や効率化の問題とも大きく関係します。
今回の状況では、年間5日休暇の取得が全くできていない武田さんに業務が偏っていることは明らかです。組織として業務を見直し、委任や仕組み化することが必須でしょう。
たまにあるパターンとして、仕事や会社が好き過ぎるのでしょうか(!?)、有給休暇を取りたがらない人がいます。そういう人には、「あと3カ月以内に5日間は必ず休むように」などと事前に調整しましょう。
さらに言えば、山本さんの社外研修と田中さんの出張が被らないよう事前のスケジュール調整は可能ですし、川合さんには在宅勤務かつ「中抜け」を許可する制度設計も検討して然るべきです。
冒頭の議論でも指摘されていましたが、「今のままの運用で有給休暇を目いっぱい取得されたらどうしよう」と会社側が危惧することは、やはり問題です。20日間の完全取得でも会社の業務が正常に回り、社員がリフレッシュすることが労使ともにWin-Winな関係です。