耐震を調べてる男性写真はイメージです Photo:PIXTA

中古戸建て物件選びに
欠かせない新耐震基準

 9月は「防災月間」。改めて、住まいの安全性、とりわけ耐震性について考える良い機会だろう。家族の安全な暮らしは、まず、安心できる住まいがあってこそ。その大前提となる耐震性について、関心を寄せるのは当然のことと言える。くしくも今、住宅市場では大きな変化が生じている。新築住宅の価格高騰と供給減を背景に、中古住宅が現実的な選択肢となっているのだ。これまで人気が先行していた中古マンションも高騰し、これまで以上に中古戸建てに熱い視線が注がれている。

 特に最近の傾向として、築年数を一定妥協し、築20年以上を選択する人が増加している。築20年以上の物件を検討する際、安心できる耐震性の“ものさし”として登場するのが「新耐震基準」という言葉である。

 しかし、多くの人が頼りにするその“ものさし”が、実は40年以上も前の基準であることをご存じだろうか。日本の耐震基準は、過去の大地震を教訓に何度も改正が繰り返されてきた歴史があり、いつの基準で建てられたかによって建物の性能は大きく異なる。そこでまずは、「新耐震」という言葉が何を指し、どのような背景で生まれたのかを見ていこう。

もはや新しくない?
40年以上前の基準「新」耐震

 最初に理解しておきたいのは、「新耐震基準」は決して“新しい”基準ではないという事実である。新耐震基準は、1981年6月1日以降に建築確認申請が受理された建物を対象とするもので、2025年現在から見れば、すでに築40年以上が経過している物件も含まれる。

 基準が生まれる契機となったのが、1978年に発生した宮城県沖地震(震度5程度)だ。それまでの「旧耐震基準」は「震度5程度の地震でも倒壊しない」という水準であったが、この地震で甚大な被害が出たことを教訓に基準が見直された。その結果、新耐震基準では「震度6強から7の大規模地震でも、人命に危害が及ぶような倒壊は免れる」という水準に引き上げられたのである。