当時としては大きな前進であったものの、まだ想定しきれていない課題も残されていた。それが、都市の直下で発生するような激しい揺れへの備えである。その課題が現実のものとなったのが、1995年に発生した阪神・淡路大震災だった。この震災では、新耐震基準で建てられた比較的新しい建物でさえも倒壊する事例が報告され、基準のさらなる見直しが急務となった。
2000年に完成した物件の多くが
「2000年基準」に該当しない可能性も
そして、先の震災で得られた教訓を基に、より実践的な基準として「2000年基準」が策定された。この基準は、中古戸建ての耐震性を測る上で、現代の安全性を判断する重要な目安。
阪神・淡路大震災では、新耐震基準の建物でさえ、想定されていなかった形で倒壊する事例が目立った。具体的には、地震の揺れで柱が基礎から引き抜かれる被害や、建物がねじれるような動きによって1階部分が押し潰される「ねじれ倒壊」が多発した。こうした被害を防ぐべく、2000年基準では主に次の点が改められた。
・地盤に応じた基礎設計
・基礎と骨組みの金物固定
・耐力壁のバランス配置(重心と剛心※1を近づけ、ねじれを防ぐ)
ここで注意したいのは、この基準が適用されるのは「2000年6月1日以降に建築確認を受けた物件」という点だ。例えば2000年10月に完成した物件でも、建築確認申請が同年5月以前であれば、この基準を満たしていないことになる。木造戸建ての工期が約半年かかることを考えると、2000年内に完成した物件の多くは、実は2000年基準に該当しない可能性が高い。
※1剛心(ごうしん)
建物の強さの中心点。重さの中心である「重心」と剛心が離れていると、地震の際に建物に「ねじれ」が生じやすくなる。
耐震性以外も要チェック!
中古戸建て購入に潜む3つの落とし穴
このように、住宅がいつの時代の耐震基準で建てられているかは、その耐震性に大きく影響することがわかるだろう。しかし、たとえこの2000年基準を満たしていても、中古戸建ての購入にはまだ注意すべきリスクが存在する。図面や基準だけでは見えてこない、建物個別のリスクだ。さくら事務所が現場で遭遇した典型的な3つのケースについて紹介する。