1アプリあたりの年間効率化効果は74時間!研修の成果

 研修の成果は、数字にも表れている。参加者アンケートによると、年間効率化効果は1アプリあたり74時間。研修の満足度は、5点満点中4.3点を獲得した。

 アプリの完成度が高い参加者には共通点があった。「普段から生成AIを利用し、使いどころを理解している。特に完成度が高かった方は、前段の業務フロー整理をしっかり行い、どの部分を生成AIに置き換えるかが明確だった」と百合氏。ただし、ワークフローの組み方やRAG、プロンプトエンジニアリングなど生成AI特有のスキルは、想像以上に参加者がつまずきやすいポイントだったと振り返る。

 さらに、市民開発者が増えれば、使われないアプリの乱立も懸念される。同社は定期的なモニタリングで利用状況を把握し、一定期間利用がないものはアナウンスした上で削除する方針だ。

 成功事例の横展開には社内コミュニティが機能している。Difyで作成したアプリはダウンロードしてコピーできるため、良い事例は積極的に共有していくという。

AIエージェントが普及した先に待ち受けるもの

 最後に、今後の展望について聞いてみた。

「AI活用がさらに進むと、AIを中心に考えた場合の最適な人員配置、リソース配分が見えてくるのではないか。『ここまでAIが担えるなら組織はこうあったほうがいいよね』といったところまで踏み込めると、本当にトランスフォーメーションしていくんだろうなと思います」(山岡氏)

ライオン デジタル戦略部 データサイエンスグループマネジャー 山岡晋太郎氏ライオン デジタル戦略部 データサイエンスグループマネジャー 山岡晋太郎氏 Photo by M.S.

 業務は大幅に効率化され、生産性は飛躍的に高まる。そのとき人間の役割はどう変わるのか。

「その業務をさんざん経験してきた人だからこそ、AIに適切な指示が出せるし、AIのパフォーマンスも引き出せる。ただし、それにはテクノロジーの理解も不可欠。生成AIや他のテクノロジーをどんどん使いこなし、持ち寄ったアイデアを、みんなでディスカッションしながら進めていけたら」(山岡氏)

 思った以上に早くやってきた、AIエージェントの時代。ライオンの取り組みが教えてくれるのは「あなたの仕事の本来の価値とは何か」という、シンプルだが本質的な問いだ。