「こどもまんなか社会」とは、全てのこども・若者が、日本国憲法、こども基本法及びこどもの権利条約の精神にのっとり、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、ひとしくその権利の擁護が図られ、身体的・精神的・社会的(筆者註:バイオサイコソーシャル。さまざまな問題を生物、心理、社会の問題という3つの側面から捉えて理解しようとする考え方)に将来にわたって幸せな状態(ウェルビーイング)で生活を送ることができる社会である(注1)。
子ども・若者当事者が、この定義をすんなり受け入れることができるかどうか疑問に感じる部分もある。しかし、子ども・若者のことを考えようとする社会への転換を目指すものであることは間違いないだろう。
自殺対策以外にも、居場所づくり、いじめ防止、不登校の子どもへの支援、校則の見直し、体罰や不適切な指導の防止などが掲げられている。
「こどもの自殺対策緊急強化プラン」は
本当に役に立つのか
「関係省庁連絡会議」が2023年6月、「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を打ち出した。
大きく3つのプランがある。
(1)1人1台端末の活用によるリスクの早期発見
(2)多職種の専門家で構成する「若者の自殺対策対応チーム」を各都道府県等に設置する
(3)警察や消防、学校、教育委員会、地方自治体等が保有する自殺に関する統計及びその関連資料を集約し、多角的な分析を行う
しかし、「緊急強化プラン」には疑問点がある。そもそもこの(1)の施策は、予算的な意味で自殺対策に特化したものではなく、不登校やいじめの増加に対処するために文科省が学校など向けに作成した施策「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」で利用されるものだ。
もちろん、学校との信頼関係があれば、生徒が1人1台端末を利用して、SOSやサインを発することができるかもしれない。しかし、信頼関係がなければリスクがあるときでもSOSを発することができないのではないか。
注1「こども大綱」2023年12月22日。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f3e5eca9-5081-4bc9-8d64-e7a61d8903d0/276f4f2c/20231222_policies_kodomo-taikou_21.pdf