こうした中で、千葉県教育委員会と千葉大学は1人1台端末を利用して、ウェブ上でストレスチェックをし、高ストレスへの対処法を紹介することにした(注4)。今後、自殺者数の推移がどうなっていくのか――。まだ始まったばかりだが、注視する必要がある。

 23年10月、県立高校の女子生徒(当時16歳)が自殺した。アンケートや作文でSOSを出していたが、教職員がトラブルの当事者だったこともあり、サインを見逃した。サインをどう受け止めるかも重要だ。

書影『子どもの自殺はなぜ増え続けているのか』『子どもの自殺はなぜ増え続けているのか』(渋井哲也 集英社新書・集英社)

 (2)の「若者の自殺対策対応チーム」については、長野県での取り組みが参考となっている。

 子どもの自殺や権利に関する民間団体の支援者、学校長、精神科医、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、児童相談所の職員らで構成する「長野県子どもの自殺対策プロジェクトチーム」がそれだ。

 こうした取り組みの中でつながっている若者たちは自殺していないとの説明がなされているが、長野県内の10代の自殺者数は減っていない。県のデータによると、未成年の県内自殺死亡率は、少なくとも過去10年、全国平均を上回っている(注5)。

 つまり、プロジェクトチームにつながれない自殺リスクのある子ども・若者たち、あるいは、リスクが見えにくい子ども・若者たちへの対策にはなっていないといえる。

注4 厚生労働省「令和4年度 我が国における自殺の概況及び自殺対策の実施状況(令和5年版自殺対策白書の骨子)」2023年10月20日。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/gian_hokoku/20231020jisatsugaiyo.pdf/$File/20231020jisatsugaiyo.pdf

注5 「子どもの自殺対策プロジェクトチーム会議」の配布資料「長野県の20歳未満の自殺の現状」。
https://www.pref.nagano.lg.jp/shippei-kansen/documents/060312ptshiryou.pdf