帰りを待つ子ども写真はイメージです Photo:PIXTA

警察庁によると、小中高生の自殺者は2022年から3年連続で500人を超えた。政府は子どもの社会課題を解決するため、2023年に「こども家庭庁」という新しい省庁を作ったが、果たして「子どもの自殺」に対する解決策を打ち出すことはできるのか。実際の事例とともに、今ある課題を考えていく。※本稿は、渋井哲也『子どもの自殺はなぜ増え続けているのか』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。

「こども家庭庁」の誕生と
子どもの自殺対策室設置

 2023年4月、子どもの社会課題を解決するため、政府は「こども家庭庁」(以下、「こども庁」)という新しい省庁を作った。解決すべき社会課題の一つには、「子どもの自殺」がある。

 こども庁は子どもの自殺対策の司令塔であり、文科省や厚労省、警察庁など関係省庁と連携していく組織だ。その対策を強化・推進するためにも、「子どもの自殺対策室」を作った。

 1980年代以降、政府は子どもの自殺対策に目を向けてこなかっただけに、期待も大きい。果たして、解決策になり得るのか。

 警察庁によると、22年、23年、24年と3年連続で小中高生の自殺者は500人を超えた。子ども世代の人口が減っているのに、自殺者が増加するのは深刻だ。

 そもそも、10代の自殺死亡率(10万人あたりの自殺死亡者数)は、少なくとも90年以降、増加傾向にある。厚労省の人口動態統計によると、10代前半(10~14歳)は、90年には0.6だったが、2000年には1.1になった。

 05年には、一度、0.7に減少したものの、その後、増減を繰り返し、20年に2.3となり、21年には2.4となった。つまり、90年を起点とすると、約4倍にもなった。