
警察庁によると、2022年・23年・24年と、小中高生の自殺者は3年連続で500人を超えた。子どもの自殺の原因として多く挙げられるのが「家庭問題」。その中でも、虐待の問題を抱えていた人は少なくないという。実際の事例とともに、虐待と自殺の関係を見ていく。※本稿は、渋井哲也『子どもの自殺はなぜ増え続けているのか』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。
「虐待」と「自殺」の
因果関係とは
筆者が直接取材したのち、実際に亡くなってしまった人には、家庭問題を抱えている人が多かった。その中でも、虐待を訴えていた当事者は少なくない。身体的虐待や性的虐待、宗教を背景としたものを含む両親の過度な期待……。
取材した人のうち、1人目の自殺者となってしまった女子中学生も、父親や兄から虐待を受けていた。警察庁による自殺統計では、毎年、19歳までの自殺の要因は、学校問題や健康問題に次いで、家庭問題が多くなっている。
ここでは虐待と自殺の関係について見ていく。
虐待する父親に対する
アンビバレントな感情
晴男(仮名、20代)は小さいころからしゃべるのが得意ではなかった。しゃべろうとして口を動かしても、緊張感が高まると、なかなか声が出てこない。そのため、父親に物を投げたり、うまく言い返すことができないながらも、口答えをしたりしていた。
「父親は話を聞かないタイプです。玄関の外に出されたり、殴られたりしました。まともな会話をしたことがありません」