そのため、ここでは、メンタルヘルス不調ではどんな症状が出るのかを、わかりやすくお伝えしていきます。

 読みながら、自分・職場の同僚・家族が、その症状に当てはまらないかを考えてみてください。

職場での叱責や嫌み
寝る前に考えて不眠に

 職場のうつといえば「眠れないという症状が出る」ことは、あなたも聞いたことがあるでしょう。

 実際に心療内科クリニックの外来受診患者で、メンタルヘルス不調がある人のほとんどに、不眠症状が存在します。

 不眠症状は、

・入眠困難(寝つきが悪い)
・中途覚醒(夜中に起きる)
・早朝覚醒(朝方早くに起きる)
・熟眠障害(ぐっすり寝た感じがしない)

 などに分類されます。

 不眠症の原因の多くは、寝る時に考え事をしていることです。

 例えば、

「上司に怒られたこと」

「職場の苦手な人に嫌味をずっと言われていること」

「締切に間に合うかどうかわからないことへの心配」

 などです。

 このような考え事をして、

「頭が冴えて寝つけない」

「眠りが浅いので夜中に起きる」

「朝方に目が覚める」

「起きた時にぐっすり寝た感じがしない」

 など先ほどの分類の症状が生まれます。

 皆さんにもこういう経験があるのではないでしょうか。

遅刻や仕事の不効率
不眠が与える悪影響

 疲れているのに眠れないというのは、明らかに生命としての自然な身体の反応とは逆の反応が起こっています。自然に発生する身体の調整がうまくいっていない、何よりの証左です。

 そして眠れないという症状は、その後にさまざまな症状を引き起こし、就業への影響につながります(ちなみに産業保健業界では、病気や症状に影響が出ていることを「疾病性」と言います。そして就業への影響については「事例性」と言います)。

 眠れないことの影響は、頭痛や肩こり、めまい、動悸などの自律神経に関わる症状として現れます。

 また自律神経に関する病気では、自律神経失調症が有名です。その症状の1つにも不眠症があり、これに関しても円環的因果律(お互いにフィードバックすること)が関係していることがわかります。