被災地から離れた医療機関では、この特別措置が周知徹底されず、過去には医療費の全額が請求されてしまうケースもあった。知らないと、言われるままに医療費を支払ってしまう可能性もあるので、災害時の医療費の特別措置についてはぜひとも覚えておきたい。
無料になるのは
公的医療保険が適用された治療
ただし、無料になるのは公的医療保険が適用された治療で、差額ベッド代など保険適用外のものは対象にならない。また、入院時の食事代などは通常通りに請求されるので、その点は注意しよう。
医療費の減免期間は災害の規模によっても異なるが、2011年3月に起きた東日本大震災では、当初は11年5月末までと予定されていた。だが、東日本大震災は東京電力の原子力発電所の事故もあり、なかなか生活再建が進まなかった。そのため、特例措置は延長が繰り返され、国による一律の支援は12年2月末まで継続された。
その後も、岩手県や福島県などの国民健康保険や後期高齢者医療制度は、独自に支援が行われたのだ。
災害列島の日本は古来より大災害に見舞われており、近年は毎年のように地震や津波、大雨の被害が起きている。だが、繰り返される災害に苦しみながらも、「被災者生活再建支援制度」をはじめとする国の支援策も整備されてきた。医療費の減免措置もそのひとつだが、こうした制度があることを知らない人もいる。
災害時に怖いのは、食料や水などの物資の不足、避難所の衛生環境などもあるが、正しい情報にアクセスできないことだろう。
正しい情報を得て、先行きが見えれば、無用な不信感を募らせずに済む。医療費に関する支援策があることが分かれば、適切な医療につながることもできて、生活再建のための費用を無駄にすることもなくなる。
防災週間の今、非常持ち出し袋の準備や避難経路の確認とともに、災害時の医療体制についても把握しておきたい情報だ。