救護の内容は、災害によるケガや病気はもちろんのこと、災害によって医療を受ける手段が閉ざされている場合も同じように医療を受けられる。例えば、高血圧症や心臓疾患などの持病のある人が、薬を持ち出せないまま避難した場合などは、原因が災害とは直接関係なくても救護班から必要な薬を処方してもらえる。
ただし、災害救助法による医療・助産は、災害による地域医療の混乱を一時的に埋めるものという位置づけだ。原則的に救助期間は災害発生日から14日間と定められている。東日本大震災のように、被害が甚大で復興が進まなかった場合は救助期間が延長されるが、あくまでも応急的もので、災害時にわざわざ治療しなくてもよいものは対象にならない。
マイナ保険証や所持金がなくても
被災者は医療を受けられる
自らも被災しながら、がんばって診療を続けている病院や診療所、歯科診療所もある。そうした医療機関を受診する場合は、通常通りに公的医療保険を使って医療を受けることになるが、被災者には特別な措置がとられる。
前述のように、日常的に医療機関を受診する時は、公的医療保険の資格確認と一部負担金の支払いが求められる。だが、避難するのが精いっぱいで、マイナンバーカードや資格確認書を紛失してしまったり、お財布を持ちだせなかったりすることもある。そのため、災害時はマイナ保険証等や所持金がなくても医療機関を受診できる特例措置がとられるようになる。
災害救助法が適用された地域の住民は、マイナ保険証等で資格確認ができなくても、氏名や生年月日、連絡先(電話番号等)、勤務先、公的医療保険の加入先などを口頭で伝えるだけで必要な医療が受けられる。また、1~3割の自己負担分についても支払いの猶予・減免が受けられる。
この8月も日本列島は自然災害に見舞われ、石川県や鹿児島県などが大雨の被害を受けた。この時、厚生労働省から関係各所に「災害により被災した被保険者等に係る入り部負担金等及び健康保険料の取扱い等について」という事務連絡が出され、保険者の判断によって一部負担金の支払い猶予・減免ができる旨が通達されている。
災害時に医療費の無料措置の対象となるのは、これまでの災害の経験から、次のように定められている。
1 災害救助法が適用された市区町村の住民
2 次のいずれかの被害にあった人
・住宅の全半壊、全半焼、床上浸水、またはこれに準ずる被災をした
・主たる生計維持者が死亡、または重篤な傷病を負った
・主たる生計維持者が行方不明になっている
・主たる生計維持者が業務を廃止、または休止した
・主たる生計維持者が失職し、現在収入がない
上記の1と2の両方に当てはまれば、当面の間は一部負担金の減免のほか、健康保険料についても猶予・減免が受けられる。免除対象になった被災者は、住宅の全半壊などで被災地を離れていても、避難した先でも医療費無料措置が受けられる。