
エンタメ業界を見渡すと、マンガ作品のアニメ化などのメディアミックスの事例は昔から多くあった。しかしインターネットが世に広まってからは、その潮流が大きく変わっているのだという。アニメ雑誌の編集者・映画プロデューサーとして長年活躍してきた著者が語る『メディアミックス論』とは?※本稿は、井上伸一郎(著)、CLAMP(イラスト)、宇野常寛(聞き手・解説)『メディアミックスの悪魔 井上伸一郎のおたく文化史』(星海社新書)の一部を抜粋・編集したものです。
アニメ作品のデジタル化によって
性別関係なく長く愛されるように
現在のメディアミックスの特徴を一言で言えば、作品のジェンダーレス化。そしてロングライフ化です。そして、それを引き起こしているのは、デジタル化に他なりません。
かつてマンガ雑誌は少年向け、青年向け、シニア向けと明確に対象年齢が分かれていました。また、少年誌、少女誌のような分け方もありました。(いや、現在でもそれぞれの雑誌は存在するのですが)電子書籍時代になり、マンガの読者を男女に分ける意味は希薄になっています。
男性向けであろうが女性向けであろうが、読者は面白いものであれば自由に購入しています。これはネット書店や電子書籍の普及による効果です。書店店頭で少女マンガレーベルを差し出すのに気おくれする男性読者も、オンライン上であれば気軽に購入できます。女性が少年マンガを購入する文化は紙の時代からありましたが、デジタル化でこの流れが加速したのは間違いありません。今や、かつて少年マンガと呼ばれていた作品の半数は、女性が支持しているのではないでしょうか。