トラブルが起こった後で「反対したはずだ」と言う心理

これで、自覚なしに言うことが180度変わってしまう上司の心理メカニズムがわかっただろう。
たとえば、ある方針で進めるのがよいと思い、そのような発言や指示をしたとする。その後、その方針で進めた結果、好ましくない事態が生じ、現在進めている方針はどこか間違っていると思うようになったとする。
そこで記憶の変容が生じる。当初も、「この方針でいってよいのか」「こんなメリットもある」「こんなリスクもある」「さて、どうするのが最善か」と思いを巡らせたはずである。それらを総合して、「この方針で行くのがよさそうだ」と判断したわけだ。
その結果、好ましくない事態が生じると、思案した際に考慮したリスクの部分が過大評価され、「じつは自分はリスクが気になっていた」という思いが膨れ上がってくる。
そして、ほんとうは「この方針で行こう」と積極的に推進したにもかかわらず、「こんなリスクがあるけど大丈夫かと言ったはず」などというように、記憶が変容してしまうのだ。