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自分で指示をしておきながら、何か問題が起きたら「そんな指示をした覚えはない」とうそぶく。あるいは、ちゃんと報告をしているにもかかわらず、「そんなことは聞いていない」と涼しい顔をする。なぜ職場ではこのようなケースが絶えないのか。厄介なのは、意図的に責任逃れをしようというずるさをもたない人物であっても、悪気なく記憶が変容してしまうことがあるという事実である。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)

※本記事は『なぜあの人は同じミスを何度もするのか』(日経プレミアシリーズ)から抜粋・再編集したものです。

シラを切って責任逃れをする人は悪人なのか

 責任逃れとして、「そんなことは言ってない」「そんな指示をした覚えはない」「そんなことは聞いてない」などとシラを切るというのは、あってはならないことではあるが、現実にはよくあることだ。

 ここで指摘したいのは、意図的に責任逃れをするような人格のねじ曲がった人物ではなく、本人自身も自分はそんなずるい人間ではないと信じている人であっても、以前自分が指示した内容や報告を受けた内容についての記憶が変わってしまうことがあるということだ。

 まずは、そのような人物の頭の中を理解できずに困惑している人のケースをみてみよう。

 日頃から信頼している上司の意見が180度変わってしまうことがあり、それをどうも本人が自覚していないようなので、どう受け止めたらよいのか困っているという。