「そんな指示をした覚えはない」で責任逃れをする上司
「これまでに何人か別の上司に仕えたことがあるのですが、なかには保身的でずるい人がいました。そういう上司は、いくら仕事ができても、人間的に尊敬できないし、嫌でしたね」
――たしかにそういう人は尊敬できないでしょうね。
「私が最初に仕えた上司なんて酷いもんですよ。ほんとに嫌らしい人間で、なんでこんな部署に来ちゃったんだ、って不運を嘆いたもんです」
――嫌らしいというと、どういうふうに?
「いろいろあるんですけど……たとえば、逐一報告・相談するようにというから報告・相談するようにしていたら、『こっちは忙しいんだ。いつまでも人に頼ってないで、自分で判断して動け!』って言われて、それじゃあって自分で判断して進めたら、『なぜオレに相談せずに勝手に動いたんだ!』って叱られたり……」
――それは戸惑いますね。
「ええ、わけわからないって思って。でも、そう言うから、逐一相談するようにしたんです。ところがあるとき、私が担当していた案件に対して、全体会議で疑問視する意見が出て紛糾したんです。そうしたら、その上司までが『ちょっとやりすぎじゃないかな』なんて言うんです。上司の意向に沿って進めてたので、そのことを言うと『私はそんな指示をした覚えはない』っていうんです」
――そうでしたか。
「ほんと、ムカつきました。裏切られたと思いましたね。まずいことになったら、あっさり切り捨てられた、って。まあ、自分のミスは部下のミス、部下の手柄は自分の手柄、っていう感じの上司がほんとにいるんだって、ある意味新鮮でしたね」
――立場上、そうやって客観視するしかないですよね。それが感情コントロールのコツでもあるし。
「そうなんですよね。組織人の生態について勉強させてもらった、って感じでしたね」