退職は、「終わり」ではなく、新しい関係の「始まり」
退職者インタビューに協力してくれる退職者は、すでに企業を離れた存在でありながら、「少しでも会社の改善に役立てば」という思いを持っています。そうした人材こそ、アルムナイとして企業にとっての貴重な財産になり得ます。
既述のとおり、インタビューを通じて得たフィードバックを企業が誠実に受け止め、実際に改善につなげたうえで、その成果を退職者に伝えることで、「自分の声が活かされた」という信頼が生まれます。この信頼があれば、再入社の可能性だけでなく、外部での紹介、業務委託、クライアントとしての関係構築など、多様な形で企業とのつながりが続いていきます。
これまで、「退職」は、企業と個人の関係の終焉と捉えられてきました。しかしいまや、退職は新たな関係性のスタート地点と捉えるべき時代に入っています。
個人がどこで働いていようとも、企業にとって、その人材は将来のパートナーであり、顧客であり、時には、再び仲間にもなり得る存在です。そうした未来を見据えるなら、辞めた人の声に耳をふさぐのではなく、その声を取り入れて、活かしていくべきではないでしょうか? そうすることで、退職という出来事を「学び」と「信頼構築」の機会としていくことができるのです。
退職は、終わりではなく、新しい関係の始まり――この考え方こそが、これからの人的資本経営における鍵となるでしょう。