子供たちに試された“教師の愛”
寄り添わずにあえて突き放す

 ちなみにこれだけシリアスなドラマの中で自分が笑ってしまったのは、終盤、「ひょっとしたらあの先生は自分たちのことを成長させるために、わざと強硬な態度を取っているのではないか」と感じた子供たちが「わざと危ない人たちと関わって暴力を振るわれそうな状態になったら助けてくれるのかを試してみよう」と考えるシーンである。実際に危ない目に遭うタイミングで、子供たちの前に現れる女王。そして彼女は不良をボコボコにする。

「やっぱりその解決方法なんだ!?ごくせんかよ!っていうか、あんたも強いのかよ!!」という感じであるが、多少やられたりもするので、そこで若干のリアリティが生まれている。とはいえこのシーンの主眼は、子供たちのことをずっと見ていなければ助けに来ることができない、ということで、本当に愛していることがわかるワンシーンである。

 それまでは、「問題を抱える生徒たちに対して、今までと違った先生が登場し、その先生が生徒から信頼を得て問題を解決していく」という「金八先生的フォーマット」が取られていた。

 それに対してこのドラマは、同じようなフォーマットではあるものの、「生徒のことをあえて先生が突き放すような展開」が挟まるようになった。寄り添うだけではなく、あえて突き放すような展開である。

 それ自体は今までもなかったわけではないが、「女王の教室」はずっとそういう展開であったという意味で、新しい試みだったと言えるだろう。

 さて、このドラマの放送後、スペシャル版として「なぜこのような苛烈な教育を是とする女王が誕生したのか」という話が語られた。初めはすごく真面目な先生だったが、子供のことをいじめから守れなかった自分を責めて、教師としての限界に悩み、冷徹な女王になっていく…という過程が描かれる。