東大の桜写真はイメージです Photo:PIXTA

「できる子が東大に行く」そんな常識を覆した学園ドラマがある。2005年放送の『ドラゴン桜』は、成績不振の生徒が東大を目指す姿を通じて、努力や逆転の意味を問い直した。2021年に放送された同作の続編で東大監修を務めた西岡壱誠氏は、教育格差や挑戦する力の本質を現代の受験と照らし合わせて読み解く。※本稿は、西岡壱誠『学園ドラマは日本の教育をどう変えたか “熱血先生”から“官僚先生”へ』(笠間書院)の一部を抜粋・編集したものです。

「受験モノ」教育ドラマの誕生
読者を惹きつけた学びのシーン

 2000年代後半、「女王の教室」と同時期に、今や「伝説の受験漫画」と呼ばれるほどの影響力を持つことになる『ドラゴン桜』がドラマ化された。これは、2003年から2007年まで連載され、2005年には阿部寛主演でドラマ化され話題となった。内容は、「偏差値が低い底辺高校から、ヤンキーやギャルが1年間一生懸命勉強して、偏差値でトップの東京大学を目指す」というものだった。

 偏差値が低いところから東大を目指すという漫画は、実はそれまでにもストーリーとして存在していた。『ラブひな』というラブコメディ作品でも、主人公が偏差値48から3浪して東大に合格している。

 だが『ドラゴン桜』はストーリー漫画であるにも拘らず学習漫画のように学びのあるシーンが描かれた。実際に名門高校や塾に取材に行き、本当に成績が上がる勉強法がどんどん登場するという今までの漫画の常識から考えると、かなり異色の作品だった。