え、そんなに!?東大模試は「3回落ち込む」、受験生のメンタル回復のために必要な人が意外だった『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第83回は、「模擬試験の結果に一喜一憂すること」について考える。

「落ち込み」を打開するには?

 初めて東大模試を受けた早瀬菜緒は、あまりの難しさに自信をなくし、帰り道に「東大受験やめたほうがいいんじゃないかな」と落ち込むのだった。

 個人的に思っていることだが、東大模試を受けると3回落ち込む。1度目は問題を見た時、2度目は模範解答を見た時、3度目は採点された時だ。

 この3回のプロセスを経て、徐々に「自分本位の入試」が削られていく。「これは正解だろう」なんて思い込みが無駄なことがわかり、「まあどうせ何点かは減点されるだろう」というマインドに落ち着く。

 そもそも、常に満点近くの点数を取る超上位層を除いて、誰しもがその難しさに驚くだろう。その意味で、「難しい、解けなかった」ということに関してはそこまで落ち込む必要はない。みんなそうなのだから。むしろ、落ち込むことは大前提で、いかにその落ち込みから抜け出せるかが勝負だ。

 なにより、受験において「落ち込む」ことが直接成績を向上させることはまずない。落ち込んだ状態が続きそうなら、それを誰かに吐き出すのが1番だ。

 では相手は誰がいいか。友達の時間を奪うのはよくない。個別の事情があるので一概には言えないが、親がおすすめだ。一方的にでも愚痴を声に出して言うことで、具体的な課題が明確になる。

 祖父母のような「受験とは直接的に関係がない人たち」に相談し、何度もくる質問に一から丁寧に説明することで、どうでも良くなってくることもある。これでもう「悲劇のヒーロー」を気取ることはできない。

「点数」よりも大事なものがある

漫画ドラゴン桜2 11巻P71『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 受験に関係ない友達と定期的に会話をするのも有効だ。すでに推薦入試などで大学が決まっている友達や就職する友達と週1で雑談するくらいでも、心が和らぐ。受験を見つめながらも、「受験以外」にも目を向け続けることは重要だろう。

 これは大学に入学してから聞いた話だが、指定校推薦が決まったある友人は、みんなに気を遣われて居心地が悪かったそうだ。学校側から指定校推薦枠に内定したのは誰々だと発表されるわけではないが、公然の秘密として生徒間で情報が出回る。表面上は以前のような友達関係が続くが、その人がいなくなると雑談のネタにされたりする。

 だが、気兼ねなく受験を相談できる相手として、友人は最適だ。ピリピリしそうになっても、帰り道に数学が伸び悩んでいる愚痴を聞いてくれたその友人にはメンタル面で大いに助けられた。

 ちなみに東大に入学したあと、友人と「○○の模試で何点とった」のような話題になることがある。あまり目立っていない人がずっとA判定をとっていたり、いかにもな優等生が実は直前までE判定だったことがわかって面白い。全国模試で1位をとったことがある人がクラスに複数人いるから驚きだ。

 もちろん、模試や入試の点数が、入学後に無関係であるとは言えない。だが、それらの成績を大前提とした上で、自分の夢ややりたいことを忠実に追えているかの方が、充実した大学生活の決め手となる。

 その意味では、勉強のことをずっと考えているばかりの受験生活よりも、雑談混じりの受験の方が面白いかもしれない。

漫画ドラゴン桜2 11巻P72『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 11巻P73『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク