円安で外貨建てコストが増大
出張・ビジネス用途客が減少
まず、20年代から続く円安により、燃料や航空機、航空機部品など外貨建ての調達コストがJAL・ANAとも増大している。JALが提出した資料によると、18年期に対する燃料費は134%、機材費は138%、海外企業に委託する整備費は170%と大幅に上昇していることが分かる。
コロナ禍後に航空需要が急回復したこと、米ボーイング社の不祥事も相まって新たな航空機の調達コストは増大している。JALは仏エアバスA350、ANAはボーイングB777XやエンブラエルE190などの新機材への更新が、業績に負担となっている。
何より、コロナ禍以降の社会情勢の変化は、コスト面だけでなく売り上げ面でも大きなマイナス影響を及ぼしている。それは、出張・ビジネス用途の利用が減ったことだ。
週末や長期休暇シーズンに集中する観光用途に比べて、ビジネス用途は平日利用が中心で、しかも速達性を重視するため高単価でも搭乗する、航空会社にとってはありがたい上客だった。しかし、リモートワークやオンライン会議の普及で出張需要は減少しているのが実態だ。この影響をもろに受け、1便ごとの収益性が悪化する原因となっている。
永遠のライバル新幹線に
正直、負け気味なJALとANA
続いて大きいのは、新幹線との競合だ。新幹線と航空機のライバル関係は、高度成長期から何十年も続いているので今更珍しいことでもない。しかし、2010年代以降に進んだ新幹線の延伸は、確実に航空機のドル箱路線に影響を及ぼしている。
例えば、北陸新幹線開業前の羽田〜小松線は約320kmという短距離にもかかわらず、時間帯によってはボーイング747や777といった大型機を投入するほどの高需要路線だった。しかし、15年に北陸新幹線が金沢まで延伸すると状況は一転。小松空港が金沢市街地から離れていることもあり、東京〜金沢間の輸送シェアにおける航空の割合は、開業前の64%(14年)から25%(18年)へ落ちてしまった。
北陸新幹線が敦賀まで延伸した24年には、航空路が何とか優位性を維持してきた石川県西部、福井県~東京の輸送需要も新幹線優位となる。羽田〜小松線の収益は一気に低下。ANAはかつて1日6便あった同路線を、16年に1日4便に、そして今年10月26日から1日2便へ減便せざるを得なくなった。
他にも、東海道・山陽新幹線「のぞみ」の本数増加や、九州新幹線の鹿児島ルート全通なども、東京〜広島、大阪〜熊本といった都市間の航空シェア低下に大きな影響を与えている。
今後も北海道新幹線の札幌延伸や、リニア中央新幹線開業などを控えている。航空側に更なる苦境が待ち構えているのだ。