インバウンドが飛行機よりも
新幹線を選びたがる意外な理由
ここで、航空側は急増する訪日観光客(インバウンド)の取り込みでリードしているはずだと思う人もいるかもしれない。しかし実際は、真逆である。日本観光のメインルートは東京~京都~大阪であり、この黄金ルートでシェアを取るのは新幹線なのだ。

しかも、外国人からすると新幹線という存在が物珍しく、非常に人気がある。新幹線に乗ること自体が日本でしかできない体験であり、飛行機で移動するのは何だか味気ないと思う外国人観光客もいるようだ。
瀬戸内や富士山、飛騨高山、北陸など黄金ルート以外の人気観光地に行くのも、主力は鉄道やバスなどの陸上交通で、航空は劣勢だ。
一方、九州や沖縄、北海道もインバウンドに人気で、東京や大阪から出向くには航空が適している。しかし、この3地域に向かうのはアジア圏の訪日客が多く、国際線の直行便がある。その直行便はほとんどが海外エアライン(LCCが多い)で、JAL・ANAはこの層を取り込めていない。例として、韓国路線の日本側のシェアは7%という少なさだ。 台湾路線に至っては日台のエアラインでは供給が足りず、東南アジアや米国、香港のエアラインが経由便で参入している。
JAL・ANAとも飛行機の仕様が国際線と国内線では異なるため、国内線の機材をそのまま国際線に転用するのが難しい。また、長距離国際線のネットワークも東京〜北米線以外は、韓国勢や中国勢と比べると乏しい印象だ。それゆえ地方発の国際線を開設しにくく、地方発着のインバウンド需要を逃していて、さらに国内線への乗り継ぎ需要も取りこぼしている。