国内線にも燃料サーチャージ導入!?
値上げ以外の対策はないのか?

 さて、ひととおり原因を分析したが、有効な対策はあるのだろうか? 国内線が実質赤字という由々しき事態に対して、JALでは国内線にも燃料サーチャージの導入などが、ANAではビジネス系運賃の引き上げなどが検討に挙がっているという。要するに、値上げである。

 しかし、ただでさえ物価高で旅行離れが進む日本人の状況を考えると、値上げはそう簡単にはできないだろう。何より、値上げすれば新幹線に客をいっそう取られてしまう可能性が高い。

 一方、筆者が思うに、最近増えているウェブ限定の国内線タイムセールは見直す余地があるのではなかろうか。あまりに“大安売り”してしまうと、JALもANAも傘下にLCCがあり、その収益を圧迫することにつながる。また、タイムセールでウェブサイトに購入希望客が集中することでシステムトラブルも発生するなど、ブランド毀損にもつながる事態が起きているからだ。

 コスト削減策としては、空港内での手荷物詰め込みなどのグランドハンドリング業務をJAL・ANA両者で共同化するなどが進んでいる。

 運休した路線を他社に委託する動きも見られる。近年、JALはフジドリームエアラインズ(FDA)と、ANAはIBEXエアラインズなどとコードシェアを行うことで路線を維持している。例えば、今冬ダイヤで運休するJALの福岡〜花巻・仙台線、ANAの中部〜松山線は、この施策が行われる予定だ。

 あるいは、JAL・ANAが運航を継続する路線でも、機材の小型化に取り組んでいる。ANAが次世代の国内線機材に、従来よりもはるかに小さいエンブラエルE190-E2を発注したのも、その一環と言えるだろう。

 訪日客の国内線取り込み策としては、JALでは国際線利用の訪日客を対象に、国内線を無料で利用できるサービスを始めている。無償なので売り上げにはつながらないが、搭乗率は上がり収益改善となるため、路線維持にはつながる施策といえる。

 地方発着の国際線網の充実は、例えば26年2月にJTA日本トランスオーシャン航空の那覇〜台北線が開設予定だ。

 島国かつ南北に長い日本では、航空網の維持はビジネス・観光・物流に不可欠なものだ。自然災害も多発しているので、陸上交通がまひした場合は航空に頼ることも多い。だからこそJAL・ANAには訪日客の取り込みなど需要が伸びる分野への投資を欠かさずに、競争力を高めてほしいと願う。

 創意工夫して競争力を高めれば、運賃の値上げや国内線燃料サーチャージなど、利用客への負担を避けられるはずだ。