ここで、20~30歳代の若者らに次々と話を聞いてみた。高齢化、という言葉について、どんなイメージを抱いているのだろうか。
ソウルの大学で日本語を学び、いまは公務員試験に向けて予備校に通っているという女性(25)は「大きな社会問題だと思います。高齢者が増えるとともに少子化も進んでいるわけですし、あまり良いイメージは持てません」と素直に語った。
「自分たちの世代が高齢になった時にはどうなるのか。年金は受け取れるのか、支えてくれる若い世代がいるのか。そんな心配もあります」
国民年金制度を改革しないと
「積立金ゼロ」という未来予想
公共機関で働いているという男性(32)も不安を口にした。「社会がこれ以上発展できず、国の競争力や消費なども下がっていくのではないか。そんな思いを抱きますね」
韓国で暮らす若い世代は、高齢化という社会の急速な変化に対する漠然とした不安を、大なり小なり、抱えながら生きているようだ。
それも当然だろう。
韓国政府の人口推計によると、72年には韓国の人口のうち65歳以上が47.7%を占めるようになる。経済活動を主に担う15~64歳の比率(45.8%)を上回るとされている。

前述のとおり、韓国では国民年金制度が始まったのが1988年で、暮らしに十分な額の年金を受け取れない高齢者が多い。一方で急速な少子高齢化により、国民年金制度は現状のまま改革をしなければ、2041年に単年の収支が赤字になり、56年には「積立金ゼロ」になりうる――。韓国政府が24年に示した見通しはこんな内容だった。
韓国政府は24年9月、国民年金の保険料率の引き上げを含む「年金改革」の計画を発表した。このままでは制度が持続できず、若い世代にますます将来不安が高まるとみているためだ。年金制度の加入者数や平均寿命の伸びなどを反映して受給額を増減させる「自動調整装置」の導入検討も打ちだした。
1961年から制度が始まった日本よりもスタートが遅く、負担・給付ともに規模が小さいが、すでに持続可能性が日本と同じように問われている。