古田敦也を生んだ“スカウトの勘”は遠い昔に…ホークス編成育成本部長が、ドラフト1位に全国的には無名の村上泰斗を選んだワケPhoto:SANKEI

これまで新人の発掘をスカウトの“目利き”に頼ってきた野球界。だがソフトバンクホークスは、スカウトの長年の勘ではなく、データによる客観性を重要視している。編成育成本部長兼、スカウト部長の永井智浩が、甲子園出場経験すらない無名の選手であった村上泰斗をドラフト1位に指名した理由を明かしてくれた。※本稿は、喜瀬雅則『ソフトバンクホークス4軍制プロジェクトの正体 新世代の育成法と組織づくり』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

甲子園のスタンドで
飛び交ったドラフト秘話

 私がサンケイスポーツの記者だった当時、1997年からの3年間はアマチュア野球の担当を務めていた。高校、大学、社会人の試合を取材するわけだが、球場のネット裏には、必ずといっていいほど、プロ野球球団のスカウトたちが陣取っている。

 夏の甲子園なら、1日で最大4試合。ただ、ドラフト候補の選手が出ないような試合もある。その合間がスカウトとの絶好の雑談タイムになる。狙いの選手がいる場合は、試合中にデータを測定したり、プレー中の映像を撮ったりしなければならないから、こちらから声を掛けるのも憚られるが、お目当ての選手がおらず、次の試合を待っているような時が大チャンスだ。

 ターゲットの登場までの待ち時間は、スカウトたちもスタンド裏で涼を取り、たばこを一服、アイスコーヒーをゴクリ。それでもまだ次の試合まで時間があって、手持ち無沙汰そうにしている頃を見計らって、スタンドの隣の席にすっと座ってみる。

 そんな時に教えてくれる昔話、逸材の獲得裏話は、いつ聞いても面白かった。