そのために3軍、そして4軍があり、実戦の機会も多いとはいえ、3軍以下はあくまで非公式戦。その厳しいサバイバル戦を勝ち抜いた、ソフトバンクの1軍という地位は、それだけ重い。

 牧原大成(編集部注/水谷が慕っていた先輩。2010年に育成選手ドラフト5位入団ながら、2023年のWBCに日本代表として出場し、世界一奪回に貢献したユーティリティープレーヤー)が水谷に何度も伝えたのは、その“気持ちの強さ”の比重が大きい。

「ずっと筑後(編集部注/HAWKSベースボールパーク筑後。2~4軍の専用球場)でもどかしい思いをしてきました。やっぱり野球選手をやっている以上は、こうやってたくさんのお客さんたちの前で野球ができる喜びというのはあると思う。毎日、どこの球場に行っても、たくさんのお客さんに入っていただいて、たくさんの声をかけていただけるというのは、ホントに幸せなことではあるんです。毎日、全部うまくいってるわけではないですし、苦しい日もありますし、ミスして悔しい日もあります。でも、プロに入ってから止まっていたものが、少しずつ動き始めている感はあります」

 新天地で、環境が変わり、モノの見方が変わったことで、水谷の心にも、ちょっとした余裕が生まれたのかもしれない。