参加の条件として、各社が対等な立場で参加するという趣旨を確認するため、出資していただく形を取りました。経営の意思として、本気でこの取り組みに参加していただきたかったからです。
私たちの主な事業は、参加メディアの優良な広告スペースをネットワークで束ね、そこにブランド広告などを配信することです。特に、Cookieレス時代への対応として、コンテンツの内容に合わせた広告を配信する「コンテクスチュアルターゲティング」方式を採用しています。あるコンテンツにマッチした広告を出したり、逆に不適切なコンテンツには広告が出ないようにしたりと、ブランドとコンテンツのアンマッチを防ぐ仕組みです。
このコンソーシアムは、加盟社が出資し、ボード会議を形成して事業会社の経営にも意見を述べるという、国内外でもかなり珍しい形のアドネットワークだと思います。
質の高い「ブランド広告」なのに
ビジネス的には厳しい理由
――それだけ品質にこだわったネットワークでありながら、ビジネス的には厳しい状況が続いているとうかがいました。
はい、非常に厳しい状況が3年近く続いています。もちろん、我々の営業力の問題もありますが、やはりグローバルな傾向として、ネット広告全体が個人をターゲットにしたデータを駆使する「人を追いかける広告」が主流になっていることが大きいですね。
かつてのテレビや新聞は、コンテンツの「枠」に広告がついていましたが、ネットでは皆が同じコンテンツを見ていても、興味・関心の違いによって、人それぞれ表示される広告が違います。その方が、広告の訴求効果が高いとされているからです。
その「効果」については、特に日本の場合、クリック率によって非常に厳密に計測されます。クリックされて初めて広告料金が発生するモデルが主流です。我々の広告商品も、人を追いかけるターゲティング以上の成果を上げてはいるのですが、それでも大手プラットフォームが提供する運用型広告の手軽さにはかないません。
たとえば、広告主が「20代女性、都内在住、ブランド志向」などといったターゲット像を指定すれば、あとは自動で広告が瞬時に配信されるため、手間がかからない。一方、私たちの方法は、どういう人がどういうコンテンツを見るだろうかと推測しながらプランニングを進めるので、少し手間がかかります。ネット広告のビジネスは利益率が薄いため、手間暇をかけると儲からないという代理店側の事情もあります。
さらにクライアントから見れば、クリック課金ならクリックされなければ費用を払わなくていいので、効率的だと感じられる。最近では、クリックだけでなく、商品購入の直前まで追跡するCPA(Cost Per Action)モデルも主流になりつつあり、より販促効率が重視される方向にシフトしています。
こうした中で、私たちのようなメディアのブランド価値を大切にする「ブランド広告」は、まだネットでは主流になり切れていません。ただ、私たちのネットワークの広告は7〜8割がブランド広告で占められています。