「なぜ売れないのか?」マーケターが陥りがちな誤解と“失敗すること”の深い意義成功より失敗体験のほうが勉強になる?西口一希氏が若手マーケターに伝えたいこととは

>>「西口一希氏に聞く、マーケティングの『いま』と『これから』(中)」から読む。

企業のマーケティング領域では、膨大な数の方法論が唱えられ、初心者マーケターを中心に、マーケティングの基本手法を学びづらい状況があると言われる。また、世の中のデジタル化が進む中で、以前と比べてマーケティングの概念も大きく変わってきた。企業のプロダクトやサービスの価値を最大化するマーケティングとは、どんなものなのか。講演や著書を通じて、マーケティングの在り方をビジネスパーソンに向けてわかりやすく解説している西口一希氏に、新時代のマーケティングの基礎となる考え方を聞いた。第3回は、マーケティングにまつわる誤解と最新トレンドについて考える。(聞き手/ダイヤモンド・ライフ編集部 小尾拓也、撮影/平野晋子)

真の優良顧客が見えてくる
「顧客ピラミッド」と「9セグマップ」

――講演や著書で紹介されている「顧客ピラミッド」は、自社にとっての顧客の重要度を、プロダクトやサービスに対する「認知度」と「購入頻度」によって5つの階層に分類したものです(図1参照)。また「9セグマップ」は、それらの顧客をブランド選好(次回の購入意欲)の強さによってさらに「積極的」「消極的」に分けるなどして、マトリックス化したもの(図2参照)。これは企業が、顧客の属性に応じた販売促進の効果とブランディングの効果を可視化するための有効なツールとされています。現場で使いこなすためには、どんなやり方で導入すればいいでしょうか。

 私が聞く限り、これらを現場で使っている関係者は多いです。それほど難しいものではありません。うまくいっているのは、経営陣が率先して導入しているケース、また現場がボトムアップで経営陣に導入を勧めているケースでしょうか。

 企業のビジネスが拡大してくると、「あれもこれも」という気持ちが現場に蔓延し、本当に必要な顧客とそうでない顧客との区別ができなくなってくる。でも実は、1つのプロジェクトでは、上位の「ロイヤル顧客」に売り上げが集中しています。一方で、昔は熱心に買っていても今は離脱している顧客もいます。一口に顧客と言っても、全然違うんですね。「顧客ピラミッド」と「9つのセグマップ」は、それらが感覚的にわかるという点で優れており、現場の業務でも使いやすいと思いますよ。