実際、釧路市の太陽光発電施設急増の問題について、NPO法人北海道自伐型林業推進協議会の大西潤二代表理事はHTBの取材に対して、以下のように「造林逃れ」の問題点を指摘している。
「伐採後、5年を経過したらいわゆる造林ですね。植林するという義務が発生してくる。そのタイミングで土地所有者から太陽光の会社に用地転用の相談があった。すなわちこれは植林義務逃れ、造林義務逃れじゃないかと」
これは釧路だけの問題ではない。事業者のモラル、中国資本が入っているかどうかなどの問題以前に、日本全国に太陽光発電を用いて「造林逃れ」をしたい土地所有者がたくさんいるのである。
こういう構造的問題は日本ではあまり注目されない。日本人は何か問題が発生すると、「あいつが悪い」「こいつが悪い」とわかりやすい「敵」をつくって吊し上げれば改善すると思っているが、実は「制度設計が悪い」ということがよくある。
メガソーラー規制で始まる
“新たなイタチごっこ”
わかりやすいのは「空き家問題」だ。
総務省の住宅・土地統計調査によると全国の空き家は900万戸にのぼっている。中には倒壊寸前のものや火災の原因になりそうなものもあって地域の安全を脅かしている。
では、なぜ日本の空き家がここまでひどいことになったかというと、「過疎化」が悪い、「モラルなき空き家の所有者」が悪いという話になりがちだが、実はこれも「制度設計」が悪かった。
固定資産税は土地に家屋が立っているだけでも「土地を有効活用している」ということで、固定資産税が6分の1に軽減される。その家屋に人が住んでいる、住んでいないは関係ない。それはつまり、空き家を取り壊して更地にすると、固定資産税が6倍に膨れ上がるということだ。
つまり、全国で深刻になっている空き家問題というのは、実は「固定資産税逃れ」をしたい土地・家屋所有者がたくさんいることが「元凶」なのだ。
こういう構造的問題があるということで、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行された。あまりに目に余るようなひどい空き家の場合、市町村長が「特定空家等」と判断し、これまでの固定資産税6分の1という優遇措置から除外されてしまうのだ。