例えば、顧客との会話で「家族で外食するときに誰が決定権を持っているか知りたい」とき、直接「誰が決定権を持っていますか?」と尋ねるのではなく、「家族で外食するとき、どんな料理を選びますか?」といった質問から始めます。その会話の中で、「いつも妻が決める」といった答えが出てくれば、その家族の中でのキーパーソンを自然に見抜けます。
軽い雑談から入り、相手が自然に答えやすい質問を投げかけることで、重要な情報を引き出します。このスキルは、同僚や上司との日常的な会話を通じて鍛えられます。
雑談しながら、相手が話したことの真意をうまく汲み取ることができる人、つまり発言の背景にある「ストーリー」を聞く力のある人は、聞き出す力も高いといえます。
例えば「寒くなったね」に対して「そうだね」と答える人もいれば、「エアコン入れようか?」と返す人もいます。
この場合、どちらのほうがより話を引き出せるでしょうか?
答えは、後者です。一見、ただの雑談に思えますが、どちらの人に「もっと話を聞いてほしい」と思うかは、明らかです。
すっかり一般的になった「心理的安全性」。この考えを活用し、冒頭で話し手に「どうぞ安心してお話しください」というメッセージを伝えます。
例えば、会議の冒頭でリーダーが「ここではどんな意見も歓迎します。安心して話してください」と伝えることで、メンバーは自分の意見を自由に述べられるようになります。こうした雰囲気づくりで、創造的なアイデアが生まれやすくなり、チーム全体のパフォーマンスが向上していくでしょう。
また、インタビューの際にも「どうぞリラックスして、経験を聞かせてください」と一言つけ加えることで、話し手は安心して自分の考えを共有しやすくなります。
「はい」「いいえ」で済む
クローズ質問は会話を沈ませる
相手の緊張がほぐれてきたら、本題に入っていきます。
ただし、油断は禁物です。聞きたいことを単刀直入に聞くのが一般的ですし、取材の場合は事前にこういうことを聞きたいという趣旨を伝えています。相手は、こちらが聞いてくるであろう内容を把握し、事前準備をしているはずです。
しかし、あまりにも予定調和のインタビューは、結果として面白い記事にならない場合が多いのも事実です。「行間で読ませられない記事」、つまり読者の興味を掻き立てられないということになります。