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ゲームにしか興味が持てない。集中が続かない。そんな理由で子どもの頃に怒られ続けてきた人はいないだろうか。その弱みは、実は思わぬ長所になることがある。実際、何をやっても続かなかった人が、大人になって意外な分野で成功を収めているのだ。脳の特性と創造力の関係を、最新の研究と実例からひもとく。※本稿は、アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳『多動脳 ADHDの真実』の一部を抜粋・編集したものです。

集中できないのに夢中になる
ADHD特有の脳の働きとは?

 ADHDの人生はパラドックスだ。スーパーフォーカスできる時もあれば、予期せぬ時に上の空になることもある。

(エドワード・M・ハロウェル、精神科医・作家)

「うちの子がADHDなわけがない。パソコンの前に何時間でも座っているんだから。なのに集中力に問題があるなんてことはないでしょう?」確かに不思議に思えるだろう。集中力が問題になる診断が下っているのにパソコンやテレビの画面からは貼りついたように離れないのだから。

 これは「ハイパーフォーカス」といって何かに夢中になり、周りで何が起きているかも気付かないくらい注意力を傾けることができる能力だ。不思議なことにこのハイパーフォーカスがADHDによく見られるのだ。

 私の患者にも文章を書いている時、楽器を弾いている時、料理をしている時、プログラミングしている時などにハイパーフォーカスできる人がいる。時間も空間も消えてしまい、気付いた時には3、4時間が過ぎている。トランス状態のようだと評する人もいる。

 集中力に問題があるのにハイパーフォーカスできるのはなぜだろうか。脳のシステム――注意力やモチベーションがどのように機能するかを考えるとその答えが見えてくる。