チームが受け身体質で、リーダーに「おんぶにだっこ」状態
――メンバーが仕事に主体的に取り組んでいる様子が見えず、熱意が低下している状態だと、チームリーダーは大変な苦悩に陥ることになる。このような状況に対し、メンバーが自律的に仕事を進められ、チームのパフォーマンス向上に繋がるリーダーの働きかけの方法はないものだろうか?
そこで参考にしたいのが、世界中で行われた経営学、心理学、経済学等の研究成果をもとに、グロービス経営大学院の教授陣が協力して書いたチーム・ウェルビーイングの教科書。「チームリーダーにできるちょっとしたのコツ」をまとめた一冊『職場を上手にモチベートする科学的方法――無理なくやる気を引き出せる26のスキル』。
今回は、同書から特別に抜粋・再編集し、「仕事の裁量」を適切に変えることで、メンバーのワーク・エンゲージメントとウェルビーイングを向上させる方法について解説。特に、仕事の負荷と裁量のバランスを見極め、メンバーが主体的に仕事に取り組める環境を整えることが重要だという。

チームメンバーが受け身で、イキイキ働いている様子がない
半年前にチームリーダーに着任した小野さんが、かつての上司である大林部長と食事をしながら、最近の悩み事について相談しています。
小野さん「メンバーが戸惑わないように仕事を割り振って、進め方もはっきり指示しているつもりです。新米チームリーダーのせいで不安にさせてはメンバーに申し訳ないですからね」
大林部長「そうか。でも、順調なことばかりではなさそうな顔つきだけれど?」
小野さん「わかりますか? じつは、メンバーがみんな受け身なのが気になっているんですよね。もっとイキイキと仕事に取り組んでもらいたいのですが……」
メンバーに「受け身でなくイキイキと仕事に取り組んで力を発揮してほしい」と願うのは、すべてのチームリーダーに共通する思いではないでしょうか。
それを実現するために目を向けたいのが、「どの程度自分の裁量で仕事を進められるか」ということです。じつは、さまざまな研究において、仕事を自分の裁量で進められるとメンバーが感じていることは、ワーク・エンゲージメントを高め、ウェルビーイングの向上につながることが明らかになっています[1]。
そもそも仕事の裁量がもてるとは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。そして、メンバーが「仕事の裁量をもてている」と実感できるためには、リーダーはどのような工夫をすればよいのでしょうか。