こうしたことからウェブやテレビ、新聞などでは「異常気象」や「気候変動」という言葉がよく使われている。
地球全体で考えれば
気象バランスは保たれたまま
異常気象とは「過去に経験した現象から大きく外れた現象」(気象庁ホームページ)を言う。この「経験から外れた現象」、すなわち異常気象は日本だけでなく、地球規模で確認できている現象である。
これまで経験したことがないという意味で「異常」、あるいは「変動」という言葉が使われているのだろう。だが、私たち地球科学者はこういう言葉遣いに違和感を覚えている。
自然界では元来、ありとあらゆることが、変動することによって均衡を保っていることを知っているからだ。自然界、ひいては地球の歴史においては、「不可逆性」(二度と同じ状態に戻らないこと)という摂理が保たれてきた。
私が火山を手掛かり足掛かりとして地球科学を研究して四半世紀が過ぎたが、この経験をもとに言えば、メディアなどで報じられている異常気象は、必ずしも異常ではない。
その異常はあくまで人間が持つスケールが生む感覚であって、地球のスケールからすれば「正常」だからだ。地球科学の「目」からすると、人間に都合が悪いから異常と見なし、勝手にそうしたレッテル貼りをしているように映る。
地球のどこかで高温による干ばつが起これば、ほかの地域では洪水が起こるという現象は、地球がバランスを取ろうとしていることを示している。異常高温となる地域があれば、別の地域で異常低温が生じることも同様である。
たとえば雨についても、地球全体としての降水量はほぼ一定で、海が誕生してから40億年の間に地球が保っている水の総量はほとんど変わっていない。
地球の立場に立てば、いっとき大雨が降る地方が現れたり、干ばつになる地方が現れたりすることは異常ではなく、よく起きている変化に過ぎない。すなわち、ある災害が個々の地域に被害を及ぼすことがあっても、それが地球全体への害悪になるとは簡単には言えないのだ。