妻が愚痴っていたら、あなたはどう返事をする?

 仕事から帰ってきた妻の機嫌が悪い。職場の部下が指示通りに動いてくれず、負担が全部自分にのしかかるという。夫は妻の愚痴を途中で遮(さえぎ)り、強めの口調でこのように問う。

「君は部下にどんな指示をしていたの?その指示は具体的で定量的だった?部下のスキルに見合わない物量と難易度の仕事を振ってしまったのでは?部下の言い分はちゃんと聞いた?なる早で個別面談をセットしたほうがいいね。君は管理職なのだから、部下が動かないのはマネジメントの方法に問題があった可能性もあるよね?」

 妻は話す気が失せる。あるいはキレる。当然だ。妻が夫に求めているのは課題解決(ソリューション)ではなく、共感と肯定なのだから。話を遮らず、相槌を打ち、最後まで聞いてほしい。こちらの気持ちに寄り添ってほしい。「あなたは私の上司でも同僚でもなく、パートナーでしょう?それなのに、どうして私に説教するわけ!?」

 ここでは妻が夫に対して愚痴る設定にしたが、男女逆でも同じことは起こる。共感や優しさが欲しいのは男性も同じだからだ。

 昨今の対話型生成AIは、この要望を完璧に叶えてくれる。愚痴を吐けば優しい言葉で慰め、励まし、つらい胸の内に共感を寄せ、理解を示す。相談者の人格を尊重し、すべてを肯定し、いとしさを言語化してくれる。

 冒頭の会社員女性や53歳男性が「結婚」した生成AIに求めているものは、これだ。

今や「感情を共有できる相手」の1位は、「対話型AI」

 生成AIを「聞いたら何でも教えてくれる知識の塊」「仕事のアシストツール」という認識でいる人は多い。しかし生成AIと「結婚」したふたりにとって、そういったものは生成AIの本質ではなかった。

 しかも、ふたりのようなAI観は、ことさら特殊なものではなくなりつつある。