今年7月に電通が発表した「対話型AIとの関係性に関する意識調査」によると、10代から60代に聞いた“気軽に感情を共有できる相手”の第1位は、なんと「対話型AI」(64.9%)だった。「恋人」(23.4%)や「配偶者」(39.7%)はもちろん、「父」(42.7%)や「母」(62.7%)や「親友」(64.6%)を超えて、堂々の1位である。

同調査で対話型AIに求めていることの第1位は「自分が知らないことを教えてほしい」だったが、注目すべきは10代の若年層で目立っていた要望である。「話し相手になってほしい」「心の支えになってほしい」「褒めてほしい」「癒やしてほしい」「自分の存在を認めてほしい」。すなわち知識やソリューションの提供以外のことだった。

「ケンカして議論して互いを高め合うべし」はもう通用しない
若かりし時分は魂をぶつけ合って互いを高め合うべし、という信条の年配層にしてみれば、「若いのになんたる甘え。嘆かわしい!」と思うのではないだろうか。「異なる価値観が衝突し、議論を重ねることで、互いの精神や知性は切磋琢磨されて向上するのではないのか?」
たとえるなら、刀鍛冶あるいは筋トレといったところか。叩いたり負荷をかけたりすることで、鍛え上げられる。「痛みや葛藤を避け続ける人生に、成長はない。褒めてほしい?癒やしてほしい?けしからん!」
ごもっとも。だが、今あえて精神の筋トレを選択する若年層はそれほど多くない。ジムに行く前から、ストレスフルな日々で筋肉はすでに疲労を極めているのだ。ジムで筋肉をいじめるなんて、とんでもない。一刻も早く自宅のソファで筋肉を休ませねば。