このように、私たちの脳は、必要な情報だけを抽出し、足りない部分は過去の経験や一般的な知識で補完するというコンピューターも驚きの方法を採用しています。これは「利用可能性ヒューリスティック」と呼ばれています。いわば、思考のショートカットです。すべての細部にこだわるのではなく、重要な部分を中心に記憶し、細かい部分は自然に省略することで、効率的な情報処理が行われているのです。

 この省エネ的な働き方こそが、無理なく多くの情報を処理し、ストレスに強い「くじけない脳」を形成する基盤となっています。

細かいことを忘れるのは
脳のエネルギーの節約

 記憶についても同様です。前述の通り、人は記憶している事柄の大まかな内容は覚えていても、細かい部分は忘れてしまう傾向があります。

 たとえば、朝食が目玉焼きだったのか卵焼きだったのかといった細部は曖昧になっても、「卵料理を食べた」という全体像が記憶されていれば、脳は十分に機能しています。この現象は、脳が必要最低限の情報だけを保持し、余分なエネルギーを使わずに済むようにしている証拠です。まだまだ大丈夫!

 ただし、朝食そのものを食べたかどうかを忘れてしまうようでしたら、ちょっと心配を始めたほうがいいかもしれませんね……。

 細部にこだわりすぎず、大局的な視点で情報を整理する習慣を身につけることで、日々のストレスを軽減し、精神的な回復力も向上させることが「くじけない脳」を育む秘訣です。記憶力が悪いのではなく、正しく脳を働かせられている証拠と開き直ることも肝心です。

 自分自身にあまり厳しくなりすぎず、必要な情報だけをしっかりと活用することが、あなたの脳の賢い働きをさらに強固なものにするでしょう。

古今東西に存在する
ヴァンパイア伝説

 ヴァンパイア伝説は、洋の東西を問わず語り継がれてきた世にも奇妙な物語です。

 中世ヨーロッパでは、呪いや罪の象徴として、人々の血を吸い不老不死を得る存在として描かれることが多く、特に東欧やアジアの伝承には、地域ごとに異なる特色を持った吸血鬼の伝説が存在します。